『メイキング・オブ・ブレードランナー ファイナル・カット』著者による『ブレードランナー2049』についての新規原稿を期間限定公開!

一般

2017.10.27

『ブレードランナー2049』の公開を記念して『メイキング・オブ・ブレードランナー ファイナル・カット』の著者ポール・M・サモンによる『ブレードランナー2049』についての新規原稿をWEBにて公開!

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ブレードランナー2049

ポール・M・サモン
翻訳 ヴィレッジブックス編集部

 カルフォルニア州、ロサンゼルス、2011年3月3日…会社設立からの13年の中でもっとも重要な権利取得交渉の最中だった、ワーナー・ブラザースと独占配給契約を結ぶアルコン・エンターテインメント(『しあわせの隠れ場所』『ザ・ウォーカー』)の共同設立者にしてCEOのブロデリック・ジョンソンとアンドリュー・コソブは、ついに最終交渉の場に立った。1982年公開のSFスリラー『ブレードランナー』の前日譚と続編に関する、映画、テレビ、それに付随するフランチャイズ権についての交渉である。
 アルコンは、将来的にコソブとジョンソンとともに新作ブレードランナーをプロデュースする、プロデューサー兼監督であるバド・ヨーキンと権利交渉を重ねていた。バドの妻であるシンシア・サイクス・ヨーキンが共同製作者、サンダーバード・エンターテインメントのCEOであるフランク・ギストラと、ティム・ガンブルが製作総指揮を務めることになる。
 ジョンソンとコソブはこう述べている。「光栄であり、興奮しています。今回の権利取得は私たちの会社にとって極めて大きな意味を持っており、個人的にも大好きな作品です。これから製作する前日譚と続編のいずれにおいても、オリジナル版をしっかりと踏まえたものにしなければいけません。その責任が我々にはあると思っています」

  続編だって?

 ブレードランナーのマニア達は、2007年を大いに祝った。リドリー・スコットがついに『ファイナル・カット』を承認したのだ。ドキュメンタリー『デンジャラス・デイズ:メイキング・オブ・ブレードランナー』に加え、2012年には何種類かの特別版DVDがブレードランナー30周年を記念して発売され、それらには、スクリーンテスト、フィリップ・K・ディックの音声インタビュー、カットシーンなどが収録されている(事実上、新たな映像で構成された、オリジナルの凝縮版とも言えるものだ)。
 だが一つの疑問が残る…続編はどうなったんだ? 2016年の段階ではどこでも上映されていない。これは実際には、何人かにとっては良いニュースだった。実際のところ、ハリウッドで作られる続編の大半は、オリジナルよりも明らかに劣っている。収益が上がればいいと、安易な作業に陥りがちなのだ。そんな連中が、苦労の連続だったブレードランナーに本気で取り組むはずがない。そもそも権利の所在からして、未だにもめているのだ。続編は決して日の目を見ないだろう。おそらくそれは良いことなのだ。ぱっとしない出来の続編が製作されないまま34年が過ぎ去ったことで、オリジナル版の独自性が保たれたと考えれば。
 そして、35年目を迎えることになった。

  35年後…

 いいニュースだ……続編の公開日がついに2017年10月6日に決定した。
 タイトルは『ブレードランナー2049』。この長らく待ち望まれていた作品は、オリジナルの脚本家であるハンプトン・ファンチャーのアイデアから生まれた。彼と、テレビドラマ『アメリカン・ゴッズ』の脚本家のマイケル・グリーンが、この続編の脚本を手がけることになる。製作総指揮はリドリー・スコット(多忙のため監督はできなかった)。そしてプロデューサーはシンシア・サイクス・ヨーキンである。
 シンシア・サイクス・ヨーキンは、ブレードランナー続編のアイデアにずっと反対していた共同権利者のジェリー・ペレンチオとの厳しい交渉を長く続けていた。2010年前後にバド・ヨーキンが病に倒れて以降は、彼女が夫に代わってこの企画を推し進める立場になった。彼女はまずサンダーバード・エンターテインメント(ウィキペディアによると、カナダのバンクーバーを本拠にする、マルチ・プラットフォームのメディア制作、配給、版権管理会社)のティム・ガンブルとフランク・ギストラと契約を結んだ。「ティムとフランクはジェリー・ペレンチオとの交渉に挑んだのよ」とシンシアは言う。「今、サンダーバード社はブレードランナーのフランチャイズの50%の権利を保有しているわ。残りの半分はバドと私が持っていたけど、今は私だけね」
 次にシンシアとバドは、アルコン・エンターテインメントと連絡をとった。映像作品の出資・製作会社であるアルコンは、1998年にブロデリック・ジョンソンとアンドリュー・コソブによって設立された、大手スタジオの資産とインディーズのアイデアを結びつけることを得意としている会社である。アルコンは2009年のサンドラ・ブロック主演の『しあわせの隠れ場所』や、誘拐と復讐を描いた2013年の『プリズナーズ』といったヒット作をこれまでに生み出している。
 アルコンはブレードランナーの前日譚と続編の権利を買い取った。そこでシンシア・ヨーキンは両者の仲介者となる。彼女はバドに、リドリー・スコット、ハンプトン・ファンチャーと和解するよう説得した(だがマイケル・ディーリーとケイティ・ヘイパーは続編に参加することはなかった)。
 2011年までに『ブレードランナー2049』は大きく進展した。脚本はオリジナル版の共同脚本家であるハンプトン・ファンチャーが手がけ、監督には『複製された男』『ボーダーライン』『メッセージ』や、アルコン製作の『プリズナーズ』を監督したフランス系カナダ人のドゥニ・ヴィルヌーヴが就任した。そして何より重要なのは、デッカード役としてハリソン・フォードが契約書にサインしたことだ(『ブレードランナー2049』はエドワード・ジェームス・オルモス、ショーン・ヤングもカメオ出演が予定されている)。そして、『きみに読む物語』『ナイスガイズ!』『ラ・ラ・ランド』に出演した人気俳優にして『ロスト・リバー』の監督でもあるライアン・ゴズリング。共演にはロビン・ライト(ハウス・オブ・カード 野望の階段』)、ジャレッド・レト(『ダラス・バイヤーズ・クラブ』、レニー・ジェームズ『ウォーキング・デッド』)、デビッド・バウティスタ(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』)、アナ・デ・アルマス(『ウォー・ドッグス』)が名を連ねている。
 2049のスタッフには、著名なイギリス人撮影監督ロジャー・ディーキンス(『ノーカントリー』)、ニュージーランドのVFX制作会社ウェタ・ワークショップ(代表のリチャード・テイラーは本作に数多くの伝統的なミニチュアワークを提供している)、アイスランドの作曲家で、ヴィルヌーヴの『プリズナーズ』『ボーダーライン』『メッセージ』に曲を提供しているヨハン・ヨハンソン(彼は最終的に降板することになるが、その取り組みはのちに、2049の共同作曲家のハンス・ジマーとベンジャミン・ウォルフィッシュによって引き継がれることになる)がいる。特に重要なデザインワークを担当するのは、『トゥルーマン・ショー』『007スカイフォール』のプロダクション・デザイナーであるデニス・ガスナーだ。
 ハンガリーのブダペストにある充実した設備をもつ巨大なオリゴ・スタジオで、2015年に大ヒットを記録した『オデッセイ』の序盤の撮影にかかっていたリドリー・スコットの助言の下、2049のチームは同スタジオに移り、2016年7月に撮影を開始、同年11月に終了した。
 これらの過程を通して、厳重な情報管理の中ではあったが、撮影現場からは良いニュースが伝わってきた。ごたごた続きのオリジナル版とは正反対で、2049の撮影が関係者たちにとって貴重な体験になったということだ。ゴズリング(オリジナル版から30年後の新たなブレードランナーであるKを演じる)は誰からも好かれていた。彼とハリソン・フォードは意気投合していたし、監督のヴィルヌーヴは皆から愛されていて、出演者とスタッフはオリジナル版を愛する人達ばかりだった。スタッフ側では、とりわけヴィルヌーヴ、シンシア・サイクス・ヨーキン、アルコン・エンターテインメントが賞賛を集めた。ドゥニの熱心な、それでいてしっかりと全体をコントロールする的確なディレクション。友好的な人柄と、2049を現実のものとするための根気強さをもったシンシア・サイクス・ヨーキン。強い情熱とともに2049へ強力なサポートをしたアルコン。彼らのそうした資質は、続々と公開されている予告編や、ニュース、舞台裏から漏れ伝わる情報でも実証されている。アルコン(それにワーナー・ブラザーズ、スポンサーのジョニー・ウォーカー・スコッチ)が生み出した、豊かで途方も無く夢中になれる体験型イベント「ブレードランナー2049 エクスペリエンス」は、2017年7月のサンディエゴ・コミコンで公開された。この精緻なプロモーションでは、2049の仮想現実の乗り物(参加者は仮想のスピナーに搭乗し、カーチェイスを繰り広げた)に加え、2049の数多くの小道具とコスチュームが、デッカードが使用するブラスターとともに展示された。屋台、ヌードル・バー、雨、煙、そして2049年にクラス市民、レプリカント、警察を俳優たちが演じた。

  要点

 現時点で何もわからないのは仕方ないが、2049はどんな話なんだ? この点だけはいまだに徹底的にガードされている。しかし、2017年7月にインターネット上で公開された公式のブレードランナー・タイムラインは、2019年と2049年の世界の、物語の裂け目を橋渡しするものだった。ここでいったん年表を整理してみよう。

2018年:オフワールド・コロニーでネクサス6型の戦闘チームが流血を伴う反乱を起こした後、レプリカントは地球で死刑を宣告される。

2019年:前ブレードランナーのリック・デッカード(ネクサス7試作型?)レプリカントのレイチェルがロサンゼルスから逃亡。

2020年:タイレル社は寿命に限りないネクサス8型を発売。眼球インプラントによって識別が容易に行えるようになった。

2022年:原因不明のEMP(電磁パルス)がアメリカ全土で電子データを破損させた。金融市場は崩壊、食糧の備蓄も大きな影響を受けた。犯人はならず者のレプリカント達だった。新しい法律が制定され、すべてのネクサス6型は廃止され、ネクサス8型にも同様の措置がとられたが、その一部は逃亡した。

2025年:科学者ネアンデル・ウォレスが遺伝子組み換え食品の特許を無償で公開。食糧危機を食い止める。ウォレス社はオフワールド・コロニーへと進出する。

2028年:ウォレス社がタイレル社を買収する。

2030-2035年:ウォレス社はタイレル社の技術を改良し、レプリカントをより制御しやすくした。

2036年:ウォレス社は“完璧な”レプリカント、ネクサス9型を作り出す。レプリカント禁止法が廃止される。

2040-2049年:ロサンゼルス市警は、ネクサス9型以外のレプリカントを廃棄すべく、ブレードランナー舞台を拡充。一方、地球温暖化はロサンゼルス周囲の海面を危機的な状況まで上昇させた。セプルベダの道沿いには巨大な防潮堤が建てられ、ロサンゼルスは存亡の危機にあった。生鮮食品は手に入らないため、減りゆく住民たちは、自動販売機で売られているウォレス社の食品を食べて生きながらえた。

  元に戻る/期待

 では、何か悪いニュースは? この原稿を書いているのは2049の製作中のため、私は映画の完成版を見ないで執筆している。これでは2049の批評などできない。
 だが、カメラの前と背後にいる高い才能に恵まれた者達と、オリジナル版へのリスペクトがある以上、2049は傑作となることが約束されたも同然だ。
 最後に、ブレードランナー2049の主要なスタッフからのコメントをもって、原稿を締めくくりたいと思う。

ブロデリック・ジョンソン(プロデューサー)
「『ブレードランナー』は常に私の好きな映画トップ10に入り続けているんだ。この映画が持つ意義はとてつもない。だからアルコンはリドリー・スコットの続編製作の承認と参加にこれほど熱心に取り組んだし、『ブレードランナー2049』に世界有数の新たな才能を結集させたんだ」

アンドリュー・コソブ(プロデューサー)
「私の世代の多くの人は、『スター・ウォーズ』こそが自分たちの幼少期の最も重要な映画だと言うだろう。私にとっては、そうじゃないがね。今まで見た映画の中で、『ブレードランナー』ほど私を虜にした作品はないんだ。あの映画はいうなれば催眠術みたいなものさ。私にとっては、映像的にも音楽的にも、いまなお最良の映画の代表なんだ。2049は、私たちの敬意の表れなんだよ」

シンシア・サイクス・ヨーキン(プロデューサー)
「『ブレードランナー2049』が「これはただの続編…とっとと撮影を終わらせよう」というような考え方で作られたものではないということだけは強く言っておきたいわ。2049に関わった人達は、誰一人として悲観していなかった。続編を作ることが目的化していなかったの。リドリーが作った、とても象徴的で明確なビジョンのある、すばらしいオリジナル版。そこに込められた細部への配慮とプロ意識と同じ水準に達しようとしながら、私たちは作品製作に臨んでいたのよ。バドも私も2049をオリジナル版のようなすばらしい作品にしたかったから」

ハンプトン・ファンチャー(共同脚本)
「シンシアは2049を実現させた。彼女じゃなかったらできなかったろう。『ブレードランナー』の続編はこれまで何度も企画されてきた。今回はドゥニさ。私は彼が好きだし、好きになれないところなんて一つもないんだ。すばらしい…見方によれば、鋼鉄でできた…若者だね。いいやつさ。同時に、彼の指示は明解なんだ。それに根っからのブレードランナーファンだしね!
 私かい? 2049の脚本を書くってことは怖いことでもあるんだ。だって、映画を台無しにできるんだからね。厄介なことになるかもしれない。脚本製作が始まってすぐに怖くなった。でも、すべてうまくいったんだよ。そうだな…ともかくよかったのさ! 続編としても、一本の映画としてもね。私が今、夢見ているのは、1作目を見たことのない、ブレードランナーのことさえ知らない若い観客が、2049を好きになってくれるだろうってことなんだ。そうすればオリジナルを見て言うだろう。「なんてこった、この作品にはご先祖がいたのか!」ってね。
 まぁ、どうなるかはわからないがね。まだ私も映画を見ていないんだから。ただ一つ言えることは、作曲、編集、監督、プロデューサーといったスタッフ全員が、畏敬の念を持って仕事をしているってことなんだ。とても強く、謙虚に、それでいて慎重にね。2049はこれ以上ないスタッフに恵まれているのさ」

ドゥニ・ヴィルヌーヴ(監督)
「『ブレードランナー』は私の好きな映画の一つだ。自分自身に言ったものさ、「スタジオは、私たちがどう思おうと、この企画を進めるさ」。うまくいくかはどうかはわからないけれど、持てる愛情と技術の全ては投じるつもりだ。一生懸命やるよ。そうしない誰かにこの仕事をやらせたくはないからね。少なくとも私は情熱を持ってやるし、オリジナルの精神に敬意を表したものにするためにも全力を尽くす。『ブレードランナー』の続編を見るのが怖かった。でも、少なくとも自分がそれをやるのなら、どうにかコントロールするし、うまくいかなかったときは、自分だけを責めればいいからね。
 最初の映画を撮ったときのような不安を感じたよ。孤独感や疑念といった懐かしい感情をね。2作目のときも持ったままでいたかった、パラノイアの一種だ。これは重要なことなんだけど、フィルム・ノワールの美しさと、オリジナルにおいて私が深く愛している、作品のある種のペースを生かし続けたかったんだ。この感覚は、最近の映画の中にもあるけれど、私はそれを十二分に生かすために全力を尽くした。リドリーは感動したと言ってくれたよ。それは私がオリジナルが持つ独特の感性を拡張できたことの証明だと思っているんだ」
(2017年7月27日に公開されたスラッシュフィルムのウェブサイトにおけるインタビュー記事「ブレードランナー2049の監督、ドゥニ・ヴィルヌーヴは未来を創っている」より)。

リドリー・スコット(製作総指揮)
「またここに戻ってこられて嬉しいよ」

*本稿はFUTURE NOIR REVISED & UPDATED EDITIONに掲載されたものです。

FUTURE NOIR REVISED & UPDATED EDITION
“XX BLADE RUNNER 2049”pp.481 – 488.
Copyright (C)2017 by Paul.M.Sammon.
Japanese translation arranged with L. Perkins Agency
through Japan UNI Agency, Inc., Tokyo

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『メイキング・オブ・ブレードランナー ファイナル・カット』


[著者] ポール・M・サモン
[訳者] 品川四郎 石川裕人
[ページ数] 615ページ
[価格] 本体3,800円+税
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