2017.04.25
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暗黒街の住人たちのシビル・ウォー!

ウォークライム:シビル・ウォー

通販限定「シビル・ウォー クロスオーバー・シリーズ」のシリーズ20冊目となるのが今回紹介する『ウォークライム:シビル・ウォー』です。

ウォークライム:シビル・ウォー(2017.01.15発売)

[ライター] フランク・ティエリ
[アーティスト] スタズ・ジョンソン
[訳者] 御代しおり
[レーベル] MARVEL
本体2,700円+税/B5/P160
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積極的に戦うことを選んだ賛成派・反対派、中立的な立場を取る者、外部から混乱を収拾させようとする者、状況を静観する者、混乱に乗じて己の野望を実現させようとする者……マーベルユニバースのあらゆる人物が、内戦に対して自らの姿勢を選ぶことになりました。
それはビランにとっても同じです。彼らも内戦とは無関係ではいられません。以前紹介した『マーベル・ユニバース:シビル・ウォー』では、賛成派につくビランの姿が描かれていましたし、『サンダーボルツ:シビル・ウォー』では、ビランからヒーローへと立場を変えた者たちの選択が描かれました。
しかし、マーベルユニバースには多様な立場のビランたちが存在しています。たとえば、特殊能力はないものの、大きな組織力を持つ「ギャング」もその一つ。彼らも超人登録法の影響から逃れることはできません。
本作『ウォークライム:シビル・ウォー』は、そうしたギャングたちがどう内戦と関わったのかが描かれます。これまでの「シビル・ウォー クロスオーバー」シリーズの中でも異色の作品と言えるでしょう。

時代遅れのギャングがスーパービランデビュー!

表題作『ウォークライム:シビル・ウォー』は、1話完結の作品で、本書の最後に収録されています。メインとなるのは『ウォークライム~』の前日譚となる『アンダーワールド』というミニシリーズです。
『アンダーワールド』は、「シビル・ウォー」が始まる前を舞台に、ジャッキー・ディオという名のギャングが、特殊能力を持つスーパービランへと生まれ変わる物語が描かれています。
10年前に仲間の裏切りによって服役していたニューヨーク暗黒街のギャング、ジャッキー・ディオ。刑期を終えるも「浦島太郎」状態の彼は、かつて仕えていた大物ギャング、シルバーメインのもとを訪れます。
多くのギャングがジャッキーが思うところの「男らしくない」スーパーパワーにすがり始める中、スーパーパワーに背を向けていたのがシルバーメインでした。
しかしシルバーメインは、敵との抗争に勝利するため、この10年の間にスーパービランと関わるようになっており、さらには、自らの体をサイボーグ化したものの、争いに敗れ、寝たきりの生活を送っていました
ショックを受けるジャッキーにシルバーメインは、新たに台頭してきたギャング、オウルのもとに行くよう勧めます。
仕方なくオウルのもとを訪れたジャッキーの前に、思わぬ人物が現れます。それは、かつてジャッキーを裏切り、監獄送りにしたチンピラのビンスでした。ビンスは科学薬品による巨大な体躯と怪力を得て、Mr.ペインというスーパービランになっていたのでした。
ビンスに叩きのめされたジャッキーは病院送りになりますが、その後、強力な武器を手に入れるべくギャングの闇取引を襲います。そこで取引されていたのはガス式の超人兵士血清。誤ってそれを吸い込んでしまったジャッキーは強靱な肉体を手に入れ、アンダーワールドを名乗るスーパービランとなるのですが、その裏には大きな陰謀が隠されていたのでした……。

アイアンマンがキングピンと手を組んだ!?

『アンダーワールド』の後日談となるのが、表題作『ウォークライム:シビル・ウォー』です。
主人公は、マーベルユニバースのギャング界の王、キングピン。この当時のキングピンは、ライカーズ・アイランドの重犯罪刑務所に収監されていました。内戦を静観していたキングピンですが、ある人物との面会をきっかけに暗躍を始めます。
その人物とはトニー・スターク。反対派を追い詰めるべく、裏社会のネットワークを利用しようと考えたトニーは、キングピンに協力を求めてきたのです。
一方、キングピンと対立するハンマーヘッドは、頭角を現してきたアンダーワールドを雇い入れます。内戦後を見据えてヒーローと手を組むギャングと、内戦が起きている隙に勢力拡大を狙うギャング。超人登録法によって引き起こされた戦いは裏社会にも波及していくのです。

登録法をめぐる対立が社会に与えた影響を、あらゆる角度から描ききろうとする本シリーズの凄みを、本書を通して改めて感じることができると思います。