2019.10.25
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ついに訪れる地球最後の日!ヒーロー達の取った行動とは…?

『アベンジャーズ:タイム・ランズ・アウトⅠ〜Ⅲ』

2013年にスタートした『アベンジャーズ』第5シリーズと『ニューアベンジャーズ』第3シリーズ。この2つのアベンジャーズタイトルが約3年かけて展開してきた、並行世界をも巻き込む全宇宙規模の危機のクライマックスが、本作『アベンジャーズ:タイム・ランズ・アウトⅠ~Ⅲ』です。

いきなり本作の解説を始めても理解し辛いと思いますので、ここに至るまでの流れを簡単に振り返っていきましょう。

『アベンジャーズ:アベンジャーズ・ワールド』から『インフィニティ』までの流れ

事の発端となったのは、生命の創造を司る超宇宙的存在ビルダーズの到来でした。彼らの一人であるエクス・ニヒロが生物の遺伝子を書き換える「創世爆弾(オリジン・ボム)」を地球へ撃ち込んだことで、惑星環境は激変。その影響により新たにスーパーパワーを持った存在も生まれ、世界は混乱へと陥ります。キャプテン・アメリカとアイアンマンは、世界規模の異変に対し、より大きな力に対抗するべくアベンジャーズのメンバー増強を決行。複数のチームを編成し、事態を対処しました(『アベンジャーズ:アベンジャーズワールド』『アベンジャーズ:ラスト・ホワイト・イベント』での出来事)。
一方、このビルダーズの到来と同時期に、多元宇宙に別個に存在する地球同士が衝突し、その片方が消滅する「インカージョン」と呼ばれる現象が発生。いち早くその事実を知ったヒーロー内秘密結社イルミナティの面々が対処に当たりますが、根本的な原因の解明には至れずにいました(『ニューアベンジャーズ:エブリシング・ダイ』での出来事)。
惑星環境の大変動と多元宇宙の衝突。ヒーロー達が地球でこの二つの巨大な危機への対処に手間取っている中、創生種族ビルダーズの全宇宙規模の侵攻が始まってしまいます。さらに、行方不明の自分の息子が地球にいることを知った狂えるタイタン人、サノスが地球侵攻を開始。宇宙と地球のどちらをも護るべく、二手に分かれて出撃したアベンジャーズの激戦を描いたのが大型クロスオーバー『インフィニティ』3部作です。
かつてないスケールの侵攻に対し、地球のヒーローがかつて敵対していたクリー帝国、シーアー帝国、スクラル帝国、アナイアラス達と手を組み、共に阻止するという胸アツな戦いが展開。大規模な艦隊戦、そしてキャプテン・アメリカの知略によりビルダーズの撃退に成功します。勝利を喜び合う間もなく地球に戻った宇宙チームは地球防衛チームと合流、からくもサノスの侵略を阻止しました。
そして、『アベンジャーズ:タイム・ランズ・アウト』では、未解決のままである多元宇宙の危機「インカージョン」に、アベンジャーズをはじめとしたヒーローたちが立ち向かう事となります。

分断されたヒーロー達は再び手を取り合うのか?

『インフィニティ』から8ヶ月後、ヒーローたちは対立する5つのグループに別れて、それぞれの方法で「インカージョン」に対処しようとしていました。
「アベンジャーズ」は、超人血清を中和され老化してしまった元キャプテン・アメリカのスティーブ・ロジャースが指揮を執り、新たなキャプテン・アメリカであるサム・ウィルソン、ホークアイ、キャプテン・マーベルらと共に、マリア・ヒルが率いるS.H.I.E.L.D.と連携して行動しています。
そのアベンジャーズに追われる立場となっているのが、ミスター・ファンタスティック、アイアンマン、ドク・グリーン(ハルク)、ビーストら科学者が中心となる秘密組織「イルミナティ」。彼らは以前、独善的な判断でスティーブ・ロジャースの記憶を消しており(『エブリシング・ダイ』での出来事)、その事実が明らかになったためスティーブの怒りを買っていました。
もうひとつの組織は、ネイモアが率いる「カバル」。イルミナティから離脱したネイモアは、サノスやマキシマスと協力関係を結び、インカージョンで衝突する別の地球を破壊するという非常手段によって自分たちの地球を守るための組織を作りました。しかし衝突する別の地球の住人を徹底して虐殺するというサノス達の残虐な行動に対して、創設者であるネイモア自身が迷いを感じ始めています。
第四の組織がアベンジャーズ(A.I.M.)。『アベンジャーズ・ワールド』でアベンジャーズ入りしたミュータントのサンスポットが、父親から譲り受けた財力を駆使して悪の科学組織であるA.I.M.を買収。同調するメンバーと共にアベンジャーズから独立、A.I.Mの科学力を自分たちの陣営に引き入れ、キャノンボール、ハイペリオン、ソーらと共に独自行動を取るようになった組織です。
そして、今回の物語の核となるのが、『エブリシング・ダイ』において、自国ラトべリアで起きたインカージョンを目撃したドクター・ドゥーム。彼もまた地球消滅の危機を阻止するべく、行動を開始していました。
8ヶ月の空白を置いて、各組織、各個人の思惑が複雑に交差した状況から『アベンジャーズ:タイム・ランズ・アウト』は始まることになります。
全てのチームに共通しているのは「インカージョンを阻止する」という目的なのですが……。

キーパーソンの二人に注目

本作は、翻訳版で9冊(『アベンジャーズ&X-MEN:アクシス』も含めると10冊)に渡って散りばめられたさまざまな伏線を回収、インカージョンを巡る物語を主軸に、多元宇宙にまで広がった一大叙事詩をまとめあげる役割を担っています。そういう意味では、これまでのシリーズを読まずにここから読み出すというのは、少々ハードルが高いと言えるでしょう。
とは言え、この後に迎えるマーベル・ユニバースの大変革を理解するという意味では、ぜひ手に取ってもらいたいシリーズです。
壮大な物語がどのような決着を迎え、続く『シークレット・ウォーズ』はどのように始まるのかという状況に関しては、実際に読んで確かめてもらいたいのですが、本作を読むにあたってひとつだけ注目してもらいたいポイントがあります。それは、スティーブ・ロジャースとトニー・スタークの関係です。
二人は、『アベンジャーズ・ワールド』の冒頭で「アベンジャーズの拡大」を計画しました。そして、二人のヒーローの考えから大きく拡大していった組織、そして人々の物語は、宇宙を超えて広がった後、始まりである二人に戻ってくることになります。このジョナサン・ヒックマンの手による『アベンジャーズ』シリーズは、SF的要素を多量に盛り込んだ壮大なるスペースオペラであると同時に、この二人のヒーローの立場や考え方の違いを改めて問い直す、シンプルな人間同士の物語でもあるのです。
マーベル・ユニバースを揺るがす大きな戦いの終着点にして、次なるクロスオーバー超大作『シークレット・ウォーズ』のプロローグともなる本作を、ぜひその目で確かめてください。

文・石井誠(ライター)

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