2018.02.15
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このリスが無敵なのにはワケがある!

『絶対無敵スクイレルガール:けものがフレンド』

絶対無敵スクイレルガール:けものがフレンド(2017.11.30発売)

[ライター] ライアン・ノース 他
[アーティスト] エリカ・ヘンダーソン 他
[訳者] 御代しおり
[レーベル] MARVEL
本体2,300円+税/B5/168P
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シンプルイズ最強!

今回は、『Ms.マーベル』『グウェンプール』に続く、新世代マーベルヒロイン翻訳シリーズの第3弾となる『絶対無敵スクレイガール:けものがフレンズ』を紹介します。
先行する二作品のヒロインは、Ms.マーベル=カマラ・カーンが2013年デビュー、グウェンプールが2015年デビューで、キャリアとしてはどちらも“新人”の域。しかし、スクイレルガールの初登場は1991年。デビューからすでに25年以上が経過しており、年数でいえばそこそこベテランの域に達したキャラクターです。設定自体も「リスの能力(と尻尾)を持つ女の子」というもので、現代的なムスリムの高校生として描かれるカマラや、今時なオタク女子のグウェンプールに比べるとかなりシンプルなものと言えるでしょう。
とはいえ、この万人にわかりやすい設定は、紆余曲折ありつつも彼女を新世代コメディ・ヒロインへと導く立派な武器になったのでした。
デビュー戦でマーベル・ユニバースの中でも最強クラスのビラン、Dr.ドゥームを敗退させるという金星を挙げたのをきっかけに、ギャグ補正(?)の無敵キャラクターという色づけがなされたスクイレルガールは、出番こそさほど多くはないものの、少しずつキャリアを重ねてきました。そして長い雌伏の期間の後、ついに2015年に独立誌を獲得するという奇跡が起きます。
なぜ今、彼女に改めてスポットが当たったのでしょうか?
近年のマーベル・コミックスにおいて、第四の壁を突き破る破天荒なコメディキャラクター、デッドプールが絶大な支持を受けていることは、アメコミファンならばご存知でしょう。マーベルがこのコメディ路線を拡大させようと考えた時、コアなアメコミファンには最強伝説でお馴染みで、誰にでもわかりやすい能力を持つスクイレルガールに白羽の矢が立った……と考えると納得できる部分もあります。
そんなスクイレルガールが個人誌を獲得するにあたって加わった新要素は「コンピューターサイエンスを学ぶ大学生」というもの。深刻に描かれることの多いヒーローとプライベートの二重生活ですが、本作ではその深刻さはほとんどなく、それがユーモアたっぷりに描かれます。
本書のカートゥーン・アニメ的な軽やかさこそ、このシリーズが切り開いた新しい世界と言えるでしょう。

絶対無敵のそのワケは…!?

これまで正体を隠すこともなく、グレート・レイクス・アベンジャーズなどでヒーロー活動をしてきたスクイレルガールことドリーン・グリーン。ITでより多くの人を助けられるようになりたいと思う一方、うまく恋人ができたらビランに彼が狙われてしまうかも…と考え、大学では正体を隠すことを誓います。

住み慣れたアベンジャーズマンションの屋根裏を離れ、大学寮に引っ越したドリーンは、早速イケメンと知り合い、さらにルームメイトであるナンシーと出会います。しかし荷物を開く間もなく、窓の外にビランを発見! スパイダーマンの宿敵、クレイブン・ザ・ハンターです。しかもドリーンの相棒のリス、チッピ・トゥをいじめているではありませんか。コレクションしている「デッドプールのスーパービランガイド」カードを参照しつつ、強敵に立ち向かうスクイレルガール。
しかしその頃宇宙では、マーベルユニバース最強のビラン、宇宙魔人ギャラクタスが地球を目指していたのでした。そしてそのことを知っているのはリスだけ。そしてリスと話せるのはスクイレルガールだけ! 地球の命運は彼女に託されてしまったのです……!

このあらすじからわかる通り、本作はコメディです。アイズナー賞<2017 Best Publication for Teens>部門を受賞しており、つまり、どちらかというと十代向けの内容になっています。
とはいえ、アイズナー賞受賞は伊達ではなく、軽めのコメディが好きな人には年齢問わずオススメできる楽しさ。リスの敏捷性、リスが人間大になった場合の怪力、リスとの会話能力…この程度の能力しか持たないスクイレルガールが、どうやってスーパービランたちを倒すのか? ぜひ本書を読んで確認していただきたいです。

ちなみに、アメリカでは「リス=かわいいけど厄介な存在」という印象があるようです。日本では普段リスを見かけることはありませんが、アメリカではちょっとした自然がある公園や住宅地に行けばリスが走り回っています。日本だとハトやスズメに近いかもしれません。筆者は一度、ニューヨーク・コミコンに行ったことがあるのですが、そのときマンハッタンの有名観光地もいくつか回った際にも、かなりの数のリスを見かけました。このリスたちは、ペットだったものが野生化し、大量に繁殖したのだそうで、すばしっこい動きで高いところに登り、電線を噛み切ったり、外壁や樹木を囓ったりもするのだとか。つまり“ちょっとうざい”存在。そのイメージは、劇中のドリーンにも投影されていて、他のヒーローやビランたちが、彼女の扱いに困る感じに繋がっています。

そんな個性的なヒロインを主役に、現代的なコメディタッチの作品を作り上げたのは、ライターのライアン・ノースとアーティストのエリカ・ヘンダーソン。本作はほとんど全ページの欄外にライアン・ノースの作中へのつっこみがものすごく小さい文字で書かれているという、今までにないタイプのヒーローコミックスとなっています。

本書では、2015年スタートの個人誌の4話分に加え、1991年の彼女のデビューエピソードも収録。こちらでは、アイアンマンの相棒になりたい彼女がその実力を見てもらうために戦いを挑み、そこに絡んできたDr.ドゥームを一蹴する(?)…という、彼女の最強伝説の幕開けを楽しめます。アートを担当するのは、当時64歳になっていた、あのスパイダーマンを生み出したスティーブ・ディッコ。「リスまみれ」になるアイアンマンとDr.ドゥームという、今であればありえない名シーンが登場します。

スクイレルガールは、2018年にアメリカ本国で公開予定のアニメシリーズ『マーベル・ライジング:シークレット・ウォーリアーズ』への登場も決定。さらに、これから制作されるマーベル初のコメディ系ドラマ『ニューウォーリアーズ』への登場も発表されています。
今後も話題に事欠かない最強ヒロイン、スクイレルガールの活躍を今からチェックしておくことをオススメします!

文・石井誠(ライター)