2017.12.19
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ハルクは伝説の救世主か? 世界の破壊者か? 惑星サカーを舞台にハルクが暴虐の皇帝に立ち向かう!

プラネット・ハルク:天の巻&地の巻

マーベル・シネマティックユニバース(MCU)の第17作目にして、『マイティ・ソー』シリーズの第3作目となる『マイティ・ソー/バトルロイヤル』。コメディ映画畑出身のタイカ・ワイティティを監督に迎え、コメディ的演出を多く含んだ同作は、『マイティ・ソー』シリーズ最高の大ヒット作となりました。
『マイティ・ソー/バトルロイヤル』の原題は『THOR:RAGNAROK』。そのタイトルから判るとおり、2004年に発表された北欧神話の終末の日である「ラグナロク」を描いたアスガルドでの戦いが主な原案作品となっています。映画は死の女神ヘラがアスガルドに侵攻し、それがラグナロクに繋がっていくという展開でした。一方、コミックではラグナロクの首謀者はロキであり、炎の魔人サーター(映画ではスルトと表記)と手を組み、アスガルドを襲撃する物語となっています。コミックと映画ではキャラクター配置こそ違いますが、炎の魔人サーターや巨大な狼であるフェンリルの登場や、ソー愛用のハンマーであるミヨネアが大破するなど、共通の要素を多く見ることができます。
しかし、映画『マイティ・ソー/バトルロイヤル』の原案となっているコミックはこれだけではありません。もうひとつ、主要なイメージソースとして挙げられるのが、今回紹介する『プラネット・ハルク』です。

プラネット・ハルク:天の巻(2017.9.29発売)

[ライター] グレッグ・パク
[アーティスト] カルロ・パグラヤン
[訳者] 御代しおり
[レーベル] MARVEL
本体2,600円+税/B5/168P
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プラネット・ハルク:地の巻(2017.10.27発売)

[ライター] グレッグ・パク
[アーティスト] カルロ・パグラヤン アーロン・ロプレスティ ゲイリー・フランク
[訳者] 御代しおり
[レーベル] MARVEL
本体2,900円+税/B5/192P
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異星を舞台とした王道バトルコミック!

国際テロ組織ハイドラの宇宙兵器の始末を任されたハルク。しかしそれはともすれば暴走し、地球規模の脅威となるハルクを恐れ、彼の追放を決意したアイアンマン、ミスター・ファンタスティックを中心としたヒーロー秘密結社「イルミナティ」によって用意された罠でした。
イルミナティはハルクを乗せたシャトルの針路を狂わせ、彼のために選んだ争いのない、知的生命体のいない星へと彼を追放したのです。しかしシャトルの計器に狂いが生じ、ハルクは暴虐の皇帝レッドキングによって統治される惑星サカーへと漂着。ポータルを通過したときの影響で弱体化していたハルクは奴隷として売られ、闘技場で犠牲となる生贄のとして買われることとなってしまいます。
闘技場でサカーの先住民族である昆虫人たちと共に怪物を撃破したハルクは、次いで残虐な見世物を楽しむ皇帝へと襲いかかります。しかし皇帝の顔に傷をつけたものの、不意打ちによって無力化されたハルクは制御ディスクを埋め込まれ、より過酷な剣闘士養成所へと送りこまれるのでした。
そこでハルクは、それぞれの事情を持つ剣闘士仲間たちと出会い、その圧倒的強さから彼らのリーダー格となり、強い絆を育んでいきます。最初の闘技場でも一緒に戦った昆虫人のミーク、岩石の肌を持つクローナ星人のコーグ、ブルードワールド最強の戦士ブルード、影の民の僧侶ヒロイム、そして帝国市民ながらレッドキングに抵抗した政治犯ロナン・カイフィの娘エロエと、ロナンに雇われていた武人ラヴィン・スキー将軍。
ウォーバウンドの義兄弟として力を合わせ、試練に挑む彼らの姿は市民からも大きな注目を集める存在へと成長していきます。一方、皇帝の顔に傷を付けたハルクを、サカーに伝わる預言が示す救世主と目する反乱軍も行動を開始。
そして戦いに勝ち抜き続けた彼らの前に現れたのは、やはり捕縛され制御ディスクを取り付けられたシルバーサーファーでした。
ハルク対シルバーサーファーの戦いの行方は一体どうなるのか。そして果たしてハルクは惑星サカーの救世主なのか、イルミナティがそうと信じたような世界の破壊者なのか……。

本作はストーリー面からして、RPG的、少年マンガ的とも言える、旅の中で仲間を得、敵だった者が味方になり、人々と力を合わせて強大な権力者に立ち向かうという、いわゆる王道展開。また、古代ローマ風の文化を持つ惑星サカーと、ハルクと仲間達の見た目もあいまって、ファンタジーものに近い雰囲気に仕上がっています。異星が舞台の話として上下巻でまとまっていることもあり、一般的なアメコミと比べて、読みやすい構成と言えるでしょう。
地球のヒーローたちの中において、その圧倒的な“力”で押し切るタイプのハルクは、作中でイルミナティが危惧する以前から基本的にトラブルメーカーの役割を負っていました。その過度な“力”を持つがゆえに、追われ続け、平穏を願いながらも決して得ることができなかったハルク。
ですが、力が支配する惑星を舞台に、己が持つ力のみでのし上がっていく下剋上の物語は、そんな彼のキャラクター性にピタリとハマることになります。『プラネット・ハルク』は、ハルクが思いきり暴れることによって報われる世界なのです。
本作では、これまで追われる立場が多かったハルクが追う側に回り、“力”に支配された世界を“力”によって解放していきます。その爽快感もさることながら、ハルクの本質である救世主と破壊者の二面性というテーマを深く追及した内容ともなっています。本作ラストにおいてその“力”がもたらした結末は、ハルクの宿業を見せつけられるようでもあります。

ハルクの宿業の物語は『ワールド・ウォー・ハルク』へ

本作は、ヒーロー同士の内戦を描いた『シビル・ウォー』後に展開された大型クロスオーバー『ワールド・ウォー・ハルク』の前日譚にあたる物語です。ヴィレッジブックスでは、2013年にこの『ワールド・ウォー・ハルク』を先行して刊行していました。
『プラネット・ハルク』におけるサカーでの戦いを経て、ハルクは絆を結んだウォーバウンドの義兄弟たちと共に地球へ帰還。
己を追放し、サカーに悲劇をもたらしたイルミナティへの復讐のため、他の地球のヒーローたちをも巻き込んだ一大決戦を仕掛けます。ブラックボルトを皮切りに、アイアンマンやファンタスティック・フォー、ブラックパンサー達を血祭りにあげたハルクは、パワーアップしたドクター・ストレンジをも捻じ伏せます。ヒーロー側が切り札として残していたのはセントリーですが、精神に問題を抱えた彼は立ちあがることができずにいました……。
ハルクの怒りが地球を震わす復讐劇、『プラネット・ハルク』を読み終えた方にはぜひお読み頂きたい一冊です。

ワールド・ウォー・ハルク(2013.6.20発売)


[ライター] グレッグ・パク
[アーティスト] ジョン・ロミータ Jr.
[訳者] 御代しおり
[レーベル] MARVEL
本体2,980円+税/B5/224P
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映画と比較しても楽しい『プラネット・ハルク』

映画『マイティ・ソー/バトルロイヤル』の中盤から登場する惑星サカー(映画ではサカール表記)は、上空に巨大なポータルがあるという設定はそのまま、文化は古代ローマ風からサイケデリックなクラブ風に、そして支配者は暴虐の皇帝レッドキングから、飄々とした狂気の支配者グランドマスターに変更。
ソーに先んじてサカーに漂着していたハルクは、闘技場で圧倒的な強さを誇り、民衆から絶大な支持を受ける生活に満足しています。そこにソーが現れ、危機に陥っているアスガルドへ帰還するため、ハルクの協力を取り付けようとする流れは、映画オリジナルのものとなっています。しかし『プラネット・ハルク』とストーリーこそ異なりますが、サカーにとどまりたい、ブルース・バナーに戻りたくないというハルクの心情は、『プラネット・ハルク』で見せたハルクの葛藤やと併せて考えるとより理解が深まるのではないでしょうか。
また、映画にもウォーバウンドの義兄弟である岩石人間のコーグと昆虫人のミークが登場しています。かなりコミカルで親しみやすい性格になっていますが、彼らの活躍も本作を読むことで、そのアレンジ具合も含めて、より楽しめることでしょう。

映画のサブテキストとしてはもちろんですが、初登場の新天地を舞台としているために予備知識がなくても素直に楽しめるストーリーライン。ハルクのさらなるキャラクター性を知る上でディープに楽しめる1冊として、ぜひハルクのファンならずとも、ぜひ読みください!

文・石井誠(ライター)

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