2018.08.07
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いま、マーベルユニバースの秘密が暴かれる!

『オリジナル・シン』

オリジナル・シン(2018.04.27発売)

 [ライター] ジェイソン・アーロン 他
 [アーティスト] マイク・デオダード 他
 [訳者] 秋友克也
 [レーベル] MARVEL
 本体3,200円+税/B5/248P
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ウォッチャー殺しの犯人を追うミステリー

今回は2014年に展開した大型クロスオーバー『オリジナル・シン』を紹介していきます。
クロスオーバー作品には、ユニバース全体がひとつの大きな事件に巻き込まれるタイプ、ユニバースが改変されたり複数の次元が入り乱れるタイプなど、いくつかのタイプがあります。『オリジナル・シン』は前者の大事件タイプですが、登場キャラクターも限られていますし、事件のスケールはそれほど大きくありません。しかし事件の「重要性」という面ではとてつもなく大きなものになっています。

「オリジナル・シン=原罪」と銘打たれた本作で、大きくクローズアップされるのは、マーベルユニバースで起こるあらゆる出来事をその目で観察してきたウォッチャーと、第二次世界大戦の頃から長きにわたって活動し、諜報機関シールドの長官も務めてきたニック・フューリーの二人です。この二人の隠された真実と「原罪」が語られていきます。

捜査に集められた意外な組み合わせのヒーロー達

物語は月面に住むウォッチャーの殺害事件から始まります。キャプテン・アメリカを始めとしたアベンジャーズとニック・フューリーは、額を撃ち抜かれ、両方の眼球をえぐり取られたウォッチャーの死体を発見し、事件の捜査を始めます。
同じ頃、奇妙な組み合わせのヒーローたちが何者かによって集められ、同じくウォッチャー殺害犯の捜査を開始しました。ブラックパンサー、エマ・フロスト、アントマンの3人は地中深くに遺棄された巨大怪獣の墓場。Dr.ストレンジとパニッシャーは異空間。ウインターソルジャー、ムーンナイト、ガモーラの3人は地球から遠く離れた惑星。彼らはウォッチャー殺害に使用されたものと同じ、ガンマ線を放つ弾丸を発見します。
一方、ニューヨークでは心を持たない人造生命体マインドレス・ワンが都市部で暴れる事件が発生。そこで、ウォッチャーの居城にあった超兵器の数々と、彼の持つ莫大な情報を狙ったと思しき容疑者集団が浮かびあがります。その容疑者とは、触れる物を黄金に変える力によって巨大な財力を築いたDr.マイダスと、その娘のエクスターミネイトリクス、そして頭部が巨大な目玉である低級ヴィランのジ・オーブ。アベンジャーズに包囲された彼らでしたが、ジ・オーブは手にしていたウォッチャーの眼球を掲げ、その秘められた力を解放します。その力とは、これまでウォッチャーが見てきた情報、秘密を目の当たりにさせるというものでした。

フューリーとウォッチャーの驚くべき真実とは?

本作のキーアイテムとなるのはこの「ウォッチャーの眼球」。これまで時空を越えてヒーローたちを観察してきたウォッチャーの眼球は、生体記録装置となっていて、さまざまな事件が記録されています。ストーリーは、ウォッチャー殺害犯を探すミステリーを軸にしながら、その眼球によって、ウォッチャーとニック・フューリーの真実が明かされていくことになります。
本作のもうひとつの特色を挙げるなら、それは「ミスマッチ」でしょう。ウォッチャーとニック・フューリー以外にも、いつもなら手を組むことがないヒーローたちがともに行動します。そのぎこちないやり取りはクロスオーバーでなければ見ることができませんし、その組み合わせが後半明かされる秘密と関係しているという仕掛けにもなっています。伏線が張り巡らされたストーリー構造になっているのも特徴です。
本作はアクションは他のクロスオーバー作品と比べて少ないかもしれませんが、キャラクターの深彫り、ある重要な設定の大転換など異なる妙味を持った、マーベルユニバースの歴史の深さを体験できる一冊です。

文・石井誠(ライター)