2018.09.21
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アメコミファン長年の謎「クリー/スクラル戦争」とは?

『アベンジャーズ:クリー/スクラル・ウォー』

アベンジャーズ:クリー/スクラル・ウォー(2018.05.30発売)

 [ライター] ロイ・トーマス
 [アーティスト] ニール・アダムス 他
 [訳者] 秋友克也
 [レーベル] MARVEL
 本体3,700円+税/B5/216P
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「クリー/スクラル・ウォー」がついにわかる!

ストーリー、アート、マーベルユニバースにおける重要性の観点で、数ある作品から厳選してお送りする通販限定シリーズ「マーベル・マイルストーンズ」。今回はその中から『アベンジャーズ:クリー/スクラル・ウォー』を紹介します。
マーベルユニバースの中で、今に至るまで影響を与え続けている「大事件」はいくつも存在していますが、宇宙規模の事件の代表といえば、クリー人とスクラル人の2大銀河帝国による星間戦争「クリー/スクラル戦争」を思い浮かべる人は多いでしょう。
クリー人とスクラル人の遺恨は、クリー人がまだ原始的な種族だった頃にまで遡ります。戦いの歴史は、惑星ハラに植物性種族のコタチ人と共存していたクリー人に対し、スクラル人が干渉したことから始まりました。スクラル人は原始種族であったクリー人を自らが理想とする形に進化させ、自分たちの帝国に加えようと目論んでいました。
しかし、その目論みはクリー人の権力欲によって失敗に終わります。スクラル人に不毛の地で新たな文明を作るよう仕向けられたクリー人とコタチ人は、スクラル人の想像を超える成果を達成します。しかしスクラル人はクリー人ではなくコタチ人を評価してしまい、その決定に怒った当時のクリー皇帝はスクラルの使節団を殺害、その技術を得ることで巨大な宇宙艦隊を擁する銀河帝国を作り上げます。
ここから文明に干渉された怨みを持つクリー人と、彼らに反逆されたスクラル人の間に遺恨が生まれたのです。この長期間に及ぶ対立が戦争へと変化する戦いを描いたのが本作『アベンジャーズ:クリー/スクラル・ウォー』なのです。

中心となる人物はキャプテン・マーベル!

この戦いは、クリー人に関係の深いヒーローの存在から始まります。彼の名前はマー=ベル。元々はクリーが地球にスパイとして送り込んだ人物でしたが、地球に住むうちに地球の人々を愛するようになってしまいます。そして、その後クリー人が送り込む兵士から地球を守るべく戦うヒーロー、キャプテン・マーベルと名乗るようになったのでした。
この時期のキャプテン・マーベルは、本体が異空間ネガティブゾーンに捕らわれており、かつてキャプテン・アメリカの相棒を務めていたリック・ジョーンズと肉体を同化させることで、少しの時間だけ地球で行動できる状態でした。この状況を打ち破るべく、キャプテン・マーベルは、ファンタスティック・フォーの持つ技術を借りるために、彼らの拠点であるバクスター・ビルに侵入しようとします。
しかしその前に現れたビジョン、スカーレット・ウィッチ、クイックシルバーら当時のアベンジャーズは、ネガティブゾーンからの脱出の影響で放射能に汚染されたキャプテン・マーベルを救うために彼を取り押さえます。
しかし時を同じくして、クリー帝国の指導者であるロナンが復活。宿敵であるキャプテン・マーベルを捕らえるべく、その尖兵であり地球で眠っていたクリー・セントリーを起動させてしまいます。
キャプテン・マーベルはロナンに捕らえられてしまい、アベンジャーズは彼を救出すべく宇宙へと向かうことになります。しかしその最中、クリー帝国がスクラル人から大規模な攻撃を受け、両者は戦争状態へと突入するのでした。

本書の注目のポイントは?

クリー/スクラル戦争は、その後も様々な作品に大きな影響を与えることになります。実際に『シークレット・インベージョン』や『インフィニティ』といった大型クロスオーバーでは、この戦争について言及されています。それなのに、どんな戦いだったのかはこれまで詳しく語られてこなかったため、それを知ることのできる本書の発売は、まさにファン待望だったと言っても過言ではないでしょう。
本作の価値は、クリーとスクラルの関係性やパワーバランスを明確にしたというユニバースのおける重要性の面だけでなく、クリエイティブ面にもあります。
本作が発表されたのは1971年。この年はマーベルコミックスを大きく変革させた『ファンタスティック・フォー』の登場からちょうど10年を迎えていたタイミングでした。1960年代は、『ファンタスティック・フォー』のスタートを皮切りに、スタン・リーやジャック・カービー、スティーブ・ディッコらが次々と新しいヒーローを生み出し、マーベルコミックスは老舗DCコミックスに肉薄するまでになっていました。
そしてその10年後、次世代のクリエイターが登場します。彼らはそれまでのクリエイターと異なり、自身がアメコミファンでした。『アベンジャーズ:クリー/スクラル・ウォー』のスタッフである、1970年代のマーベルを代表するライターのロイ・トーマス、アーティストのニール・アダムスもそうした中の二人で、彼らの活躍はコミック業界に大きな変革をもたらすことになります。

文・石井誠(ライター)