2017.04.17
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18年越しのシリーズ全巻邦訳!

ヘルボーイ・シリーズ

ヘルボーイ・シリーズ邦訳の歴史

ホラーやオカルト要素を盛り込んだストーリーと、コントラストを強めた特徴的なアートの融合によって、アメコミファンから高い支持を得てきた、マイク・ミニョーラの『ヘルボーイ』シリーズ。アメリカでは1994年にスタートし、2011年までにコミックブック全57冊、単行本12冊が刊行。物語は主人公であるヘルボーイの死によって幕を閉じ、シリーズは一旦の完結を迎えました(この後、地獄へ戻ったヘルボーイのその後を描く、『ヘルボーイ・イン・ヘル』シリーズが、翌2012年からスタートしているので、「第1期完結」というのが正しい言い方になるかもしれません)。

邦訳版では、2013年に本編の最終巻である『ヘルボーイ:疾風怒濤』が発売され、物語がどう完結するのかはわかっていましたが、その段階ではまだ『ヘルボーイ:捻じくれた男』『ヘルボーイ:地獄の花嫁』が邦訳されておらず、日本では完全に完結してはいませんでした。その後、2015年に11月に『ヘルボーイ:捻じくれた男』が、2017年1月に『ヘルボーイ:地獄の花嫁』の邦訳が刊行され、ついにシリーズすべてが邦訳されたことになります。

『ヘルボーイ』シリーズの邦訳は、本国でのスタートから遅れること5年、1999年5月に『ヘルボーイ:チェインド・コフィン[縛られた棺]』が発売されたことから始まります。

『ヘルボーイ:チェインド・コフィン[縛られた棺]』は、アメリカでは単行本としては第3巻に当たるシリーズ初の短編集であり、いきなり本筋のストーリーからの翻訳ではなく、「作品の雰囲気を知ってもらう」入門書的な位置づけだったと言えるでしょう。

それから5ヶ月後の1999年10月に本編の第1巻『ヘルボーイ:破滅の種子』、2000年3月に第2巻『ヘルボーイ:魔神覚醒』、2000年8月に第4巻『ヘルボーイ:滅びの右手』が邦訳されました。
しかし邦訳の刊行はここで一時ストップしてしまいます(ここまでの4冊は小学館集英社プロダクションから刊行され、その後『ヘルボーイ:壱〜破滅の種子/魔神覚醒〜』、『ヘルボーイ:弐〜チェインド・コフィン[縛られた棺]/滅びの右手』という4冊を2冊に合本した形で2010年に復刊しています)。

その後、再び邦訳版の刊行が始まるのは4年後の2004年。ギレルモ・デル・トロ監督による映画版『ヘルボーイ』の公開に合わせる形で、第5巻『ヘルボーイ:妖蛆召喚』が11月に発売されます。

ちなみに、映画版『ヘルボーイ』は、第1巻『ヘルボーイ:破滅の種子』、第2巻『ヘルボーイ:魔神覚醒』をベースにしつつ、ヘルボーイたちが所属するB.P.R.D.(超常現象捜査局)に新人捜査官が配属されるという要素を追加してストーリーが作られています。アメリカではヒットしたものの、日本ではアメコミ映画の認知度が現在よりもはるかに低かったために(当時はサム・ライミ版『スパイダーマン2』が公開され、アメコミ映画が一般的に認知され始めた時期)、日本での公開はアメリカより6ヶ月も遅れ、日本未公開になるのではと、ファンを心配させました。原作者であり、デル・トロ監督と親交があったミニョーラも、原作・共同製作総指揮・ビジュアルコンサルタントとして映画制作に参加し、劇中用のデザインを多数手がけています。

映画続編もはさみ、ようやく邦訳が完結!

その後、第6巻『ヘルボーイ:人外魔境』が2006年5月に、第7巻『ヘルボーイ:プラハの吸血鬼』が2008年8月に、第8巻『ヘルボーイ:闇が呼ぶ』が2008年12月に、第9巻『ヘルボーイ:百鬼夜行』が2010年6月にジャイブから刊行されます。

第6巻『ヘルボーイ:人外魔境』までは、マイク・ミニョーラ自身が作画も手掛けていましたが、『ヘルボーイ:プラハの吸血鬼』からは、作画を別のアーティストに任せるようになります。これはミニョーラが、コミックだけでなく、映画やアニメも手掛けるようになり、活動の幅が広がったためです。しかし、ダンガン・フィグレドやリチャード・コーベンという、ミニョーラが認めたアーティストが作画を手掛けることによって、『ヘルボーイ』は、その作品世界の幅を広げることになりました。

2008年には邦訳が2冊刊行されています。これは、劇場版第2作となる『ヘルボーイ:ゴールデン・アーミー』(アメリカでは2008年7月公開、日本では2009年1月公開)が公開されたタイミングに一致します。『ヘルボーイ:ゴールデン・アーミー』は、前作からストーリーは続いているものの、原作コミックスにはベースとなるエピソードは存在しません。ミニョーラも前作同様に原作・共同製作総指揮・ビジュアルコンサルタントとしてクレジットされていますが、前作ほどデザイン面で関わってはいませんでした。

2010年に邦訳が発売された『ヘルボーイ:百鬼夜行』から3年が経過し、「完結編を早く読みたい」というファンの要望に応えるべく、メインシリーズ完結編となる長編『ヘルボーイ:疾風怒濤』が2013年12月にヴィレッジブックスから発売されます。しかし、その時点では、未邦訳の2冊の短編集が残っていて、それらは、2015年11月に第10巻『ヘルボーイ:捻くれた男』、2017年1月に第11巻『ヘルボーイ:地獄の花嫁』として刊行されました。

『ヘルボーイ:地獄の花嫁』に収録された6つの短編

『ヘルボーイ』の短編集は、単行本全12冊の中に4冊あります。短編集には、世界各国の伝承や伝説など、オカルティックなエピソードが収録されていて、メインストーリーでは描き切れなかった、ヘルボーイの別の一面や不思議な世界を垣間見せる役割を担っていました。邦訳最新刊『ヘルボーイ:地獄の花嫁』には、6つの短編が収録されています。

メキシコのルチャリブレ(覆面レスラー)の悲劇。人喰い館の物語。吸血鬼に支配され続けた一家の末路。悪魔の生け贄にされた花嫁に隠された真実。奇妙な遺産を手にした男が呼び出す異形の怪物。異星人によるアブダクション……。『ヘルボーイ』の世界観を広く、そして深める要素に満ちた、オカルティックで幻想的な作品となっています。

邦訳開始から18年越しでシリーズ全巻が邦訳されたということは、記念すべき出来事だと思いますが、年月がかかってしまったゆえに、一部の単行本は入手しづらい状況にもなっています。しかし、これまでの邦訳版で一番入手が困難になっていた『ヘルボーイ:人外魔境』が数量限定で復刊されました。まだ読んだことがない方は、ぜひこの機会に読んでみていただきたいですし、途中で挫折してしまっているファンも、このタイミングで再び手にしてもらいたいと思います。

余談ですが、2017年1月11日にギレルモ・デル・トロ監督がTwitterで映画『ヘルボーイ3』にツイートをしました。それは、「『ヘルボーイ3』を観たいか」という質問に「はい」と答える人が、24時間で10万人以上いれば、『ヘルボーイ3』の実現に向けて、ミニョーラや主演のロン・パールマンと話し合うというものでした。結果、「はい」という回答は13万を越え、監督は実際に関係者と話し合ったそうです。しかし、その結果は思わしくなかったようで、後日、監督は「この続編が実現する可能性は100%なくなった」とツイート。残念なことですが、映画続編の企画は消滅してしまったことも報告しておきます。

文・石井誠(ライター)

関連作品

ヘルボーイ:疾風怒濤(2013.12.10発売)
[ライター] マイク・ミニョーラ
[アーティスト] ダンカン・フィグレド
[訳者] 今井亮一 石川裕人
[レーベル] DARK HORSE
本体3,200円+税/B5/P232
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⇒書籍詳細

ヘルボーイ:妖蛆召喚(2014.6.30発売)
[著者] マイク・ミニョーラ
[訳者] 堺三保
[レーベル] DARK HORSE
本体2,900円+税/B5/P160
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ヘルボーイ:捻じくれた男(2015.11.30発売)
[ライター] マイク・ミニョーラ
[アーティスト] リチャード・コーベン 他
[訳者] 秋友克也
[レーベル] DARK HORSE
本体2,900円+税/B5/P160
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ヘルボーイ:地獄の花嫁(2017.1.30発売)
[ライター] マイク・ミニョーラ
[アーティスト] リチャード・コーベン 他
[訳者] 今井亮一
[レーベル] DARK HORSE
本体3,100円+税/B5/P200
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ヘルボーイ:人外魔境(2017.04.17発売)
[著者] マイク・ミニョーラ
[訳者] 堺 三保
[レーベル] DARK HORSE
本体3,000円+税/B5/P160
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※オンライン書店「fujisan.co.jp」のみの限定販売商品です。一般書店、その他のネット書店ではお買い求めいただくことはできません。
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