2017.06.29
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新生ガーディアンズ誕生! 寄せ集めヒーローチームの大躍進を見よ!

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:レガシー

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:レガシー(2017.4.28発売)

[ライター] ダン・アブネット アンディ・ラニング
[アーティスト] ポール・ペレティエ
[訳者] 秋友克也
[レーベル] MARVEL
本体2,600円+税/B5/P152
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映画化までわずか4年、異例の大出世チーム!

5月12日に公開され、前作を超えてヒットしているマーベル・シネマティックユニバース(以下、MCU)最新作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』。
MCUの世界観を宇宙に広げるという役割を担っていた前作の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年公開)は、SFアクションとコメディ的要素を融合させ、それを80年代の懐かしの流行曲で彩るというスタイルで、キャラクターの知名度は皆無でしたが、予想を超えた大ヒットとなりました。落ちこぼれヒーロー同士が力を合わせて巨大な敵と戦う…そんな「負け犬たちのワンス・アゲイン」的なカタルシスを持つ、王道とも言える物語も高い支持を受けた理由のひとつでしょう。
待望の映画第2弾『リミックス』は、主人公のスターロードことピーター・クイルと、彼の父親との関係が物語の主軸となっています。前作で結束を深めた他のガーディアンズのメンバー(前作のクライマックスで仲間を助けるためにその身を犠牲にしたグルートの再生した姿であるベビー・グルートも)も各人のキャラクターが掘り下げられていきます。スターロードと実の父親、育ての父であるヨンドゥとの物語。ベビー・グルートを自分の子供のように世話するロケット・ラクーン。ガモーラとネビュラの姉妹関係--。80年代ヒットソングに彩られた音楽とコメディテイストもさらにパワーアップして、まさに期待通りの仕上がりと言えるでしょう。

そんな『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』を楽しんだ方にもぜひ読んで頂きたいのが、今回紹介する『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:レガシー』です。2008年にスタートしたシリーズで、本書では彼らチームのオリジンが描かれます。
そもそも、1969年に『マーベル スーパーヒーローズ』誌でデビューした「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」は、平行世界「アース-691」(よく知られたマーベルキャラクターたちが存在しているのはアース-616)で、31世紀の未来を舞台に活躍するSF系ヒーローチームでした。今のガーディアンズとは、設定もメンバーもまったく異なる物語だったのです。
1990年には、このオリジナルメンバーによる独立誌『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』Vol.1も創刊されますが、95年に62号をもって終了。彼らのマーベルユニバースへの出演自体も、1996年の『ニューウォーリアーズ』誌を最後に無くなり、以降、シリーズは休眠状態に入ります。
2008年に始まったVol.2(本作)は、このVol.1のチームから「名前を借りただけ」の設定もキャラクターもまったく異なる物語です。劇場版第2作では、シルベスター・スタローン演じるスターホークをはじめ、初代ガーディアンズのメンバーを思わせるキャラクターも登場していますが、これはオリジナルメンバーからすれば「軒を貸して母屋を取られる」というような状態だったわけです。
ではなぜこんなことをしたのかと言えば、それは端的に言うと、活躍の場があまりないキャラクターを寄せ集め、再生させようとしたからです。周知のとおり、この試みは大成功をおさめます。他のヒーローチームものとは異なる、各個性のいい意味での「不揃い」具合が、シリーズの大きな魅力となったのです。
新シリーズがスタートした2008年と言えば、映画『アイアンマン』が公開され、MCUがスタートを切った記念すべき年にあたります。まだ他のチームに比べて結成して日の浅い新生ガーディアンズが、その4年後の2012年に映画化発表、2014年には映画公開された経緯を振り返ると、彼らがどれだけ異例のスピードでマーベルの看板チームになったかということがわかると思います。

新生ガーディアンズ結成へと至る道

この『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:レガシー』で描かれる新生ガーディアンズの誕生は、その前に起きたふたつのクロスオーバー『アナイアレーション』と『アナイアレーション:コンクエスト』がきっかけとなっています。

『アナイアレーション』では、異次元世界「ネガティブ・ゾーン」の支配者である、昆虫人アナイアラス率いる大艦隊がクリー帝国に襲来し、かろうじてヒーロー達が食い止めます。続く『アナイアレーション:コンクエスト』では、悪の人工知能ウルトロン率いる機械生命体ファランクスがクリー帝国への侵略を開始します。どちらのクロスオーバーでも、ノバ(リチャード・ライダー)、スターロード、クェーサー、アダム・ウォーロック、ロケット・ラクーン、ガモーラ、ドラックス、マンティス、グルートたちが共闘し、敵を打ち倒しました(グルートはウルトロンの重要拠点を自分が犠牲となることで破壊し、小さくなってしまいます)。
スターロードは、こうした危機に事前に対処するチームが必要だと考え、ロケットやドラックスたちに、新たなチームの結成を呼びかけます(リチャード・ライダーは壊滅状態に陥ったノバ・コァを再建のため一行から離脱)。この呼びかけに応え、誕生したチームの活躍を描くのが、本書『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:レガシー』なのです。
宇宙に生まれる謎の亀裂に、船ごと突っ込む謎の団体の行動を阻止するという最初の任務に成功した彼らは、チーム名も決まらないまま、次の調査任務に赴きます。そこで氷漬けとなったアベンジャーズ・マンション正門の飾りと、キャプテン・アメリカのシールドを持つ初代「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のひとり、メジャー・ビクトリーことヴァンス・アストロヴィクを発見します(ちなみに、アース-616のジャスティスことヴァンス・アストロヴィクとは別人)。彼を連れて本拠地の宇宙ステーション「ノーウェア」に戻ったメンバーを待ち受けていたのは……。
「信仰か死か」という物騒な教えを唱えるユニバーサル・チャーチ・オブ・トゥルースの陰謀、突如現れた初代ガーディアンズのメンバー…謎が謎を呼ぶ展開と、その合間にある一行の思わず笑ってしまうやりとりは読者を飽きさせません。

本書の後半は、既刊『シークレット・インベージョン』のタイインにもなっています。スクラル人による侵攻は、舞台となった地球から遠く離れた深宇宙にも影響を及ぼしていたのです。ただ本編とはほとんど関係がないので、本編を読んでいなくても単独で面白く読めるようになっています。
ガーディアンズの本拠地「ノーウェア」で起きた爆破テロで発見されたスクラル人の死体。
一体誰が招き入れたのか? 姿を変えられるスクラル人はまだ誰かに化けて潜んでいるのではないか?
疑心暗鬼の中、動き出した彼らの取った解決法とは…?
『ニューアベンジャーズ』を中心としたメインシリーズを読んできたファンにも、初めてシリーズに触れるファンにもぜひ読んでもらいたいオススメのエピソードです。

映画でガーディアンズを好きになった方にも最適な入門編!

映画1作目の、今まで縁のなかったメンバーが集まる、仲間を守るためにグルートがその身を犠牲にして身体を失うという設定は、『アナイアレーション:コンクエスト』に重なります。一方、映画2作目の、チームが結成された状態から物語がスタートし、小枝から再生したグルートや、元祖メンバーが姿を現す設定は、本作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:レガシー』からモチーフを取っているようです。映画版は、コミックの設定をふまえつつ、まったく異なるものに変えていますので、それぞれ違った楽しみ方が可能です。映画で彼らが気になった方は、ぜひコミックも読んで、さらにこの世界観にハマっていただければと思います。ロケット・ラクーンとグルートが気になる方には、彼らのオリジンが収録されている既刊『ロケット・ラクーン&グルート』もお勧めです!

文・石井誠(ライター)