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自分の幼馴染や元カレが、あのスパイダーマンだったら……!?
『フレンドリー・ネイバーフッド・スパイダーマン:シビル・ウォー』
大ヒット公開中の映画『スパイダーマン:ホームカミング』に合わせて、今回は通販限定「シビル・ウォー・クロスオーバー・シリーズ」から『フレンドリー・ネイバーフッド・スパイダーマン:シビル・ウォー』をご紹介します。
フレンドリー・ネイバーフッド・スパイダーマン:シビル・ウォー(2017.06.15発売)

[ライター] ピーター・デビッド
[アーティスト] トッド・ナウック スコット・イートン
[訳者] 御代しおり
[レーベル] MARVEL
本体2,600円+税/B5/P136
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シビル・ウォーのキーとなったスパイダーマンの物語
アメコミでは、主人公となるヒーローの名前を冠した連載シリーズを「オンゴーイング・シリーズ」と呼びます。マーベルの看板キャラクターであるスパイダーマンは、その人気に比例するように複数のオンゴーイング・シリーズを持っています。表題となっている『フレンドリー・ネイバーフッド・スパイダーマン』は、大型クロスオーバー『シビル・ウォー』の展開当時『アメイジング・スパイダーマン』、『センセーショナル・スパイダーマン』と共に連載されていたアース-616(メインのマーベル・ユニバース)を舞台したシリーズの名称です。
「シビル・ウォー・クロスオーバー・シリーズ」では、『アメイジング・スパイダーマン:シビル・ウォー』、『ピーター・パーカー、スパイダーマン:シビル・ウォー』の2冊が刊行済み。本作『フレンドリー・ネイバーフッド・スパイダーマン』も含め、2006年当時展開していたスパイダーマンのオンゴーイング・シリーズ3作全てが『シビル・ウォー』とクロスオーバーしていたことがわかります。
前回このブログで紹介した『マーベルマスターワークス:アメイジング・スパイダーマン』は、スパイダーマンの原点である連載開始初期のコミックをまとめたものでした。スパイダーマンというヒーローの特殊性は、その連載開始当初から「覆面をして、世間に正体を明かしていない」という匿名性にありました。「正体不明のスーパーヒーロー」と「いじめられっ子の高校生ピーター・パーカー」の二重生活という要素があったからこそ、キャラクターの心情描写や人間関係に他の作品には無い種類の深みや彩りが加わり、それがスパイダーマンの物語の大きな魅力となったのです。
この二重生活は、周囲の人々に「正体がバレるかもしれない」という物語的な緊張感を作り出し、ビランとの戦いの行方と共に、読者の心を掴んできました。
そのような経緯もあり、スパイダーマンの正体に関しては、『シビル・ウォー』に至るまでの長い連載期間中に基本的には公にされることがなく、その匿名性が維持されてきました。
しかし、『シビル・ウォー』において超人登録法を支持する立場を選んだスパイダーマンは、それまで隠し続けてきた正体を世間に向けて公表。『シビル・ウォー』の前半において、スパイダーマンはアイアンマンと共に超人登録法賛成派のアイコンとなったのです。
しかし正体を明らかにしたがゆえに、これまで戦ってきた数々のビランたちが、自分のみならずメイやMJといった愛する家族や、ピーターの周囲の人々までもを狙うようになり、彼は自らの選択を悔やむことになります。身をもって超人登録法の欠点を思い知らされたピーターは、物語の半ばにして登録法反対派へ移ることになるのですが、このあたりの経緯は、先述の『アメイジング・スパイダーマン:シビル・ウォー』に詳しく描かれています。
本作では、そうしたシビル・ウォーの本筋部分ではなく、ピーターの正体を知った昔からの友人や同僚の反応を中心に物語が描かれていて、登録法賛成派の時点と、反対派に転向したあとの時点でのエピソードがそれぞれ収録されています。
スパイダーマン初期キャラクターたちの同窓会!
超人登録法が施行された当時、ピーター・パーカーはかつて自分が通っていたミッドタウン高校で非常勤講師を務めていました。しかし、世間にその正体を公表した途端、学校が悪党に襲われることを心配する生徒の保護者から糾弾されることになります。そこでピーターは辞職を決意しますが、同じタイミングで、保護者の心配は現実となってしまいます。ピーターを狙ってミステリオがミッドタウン高校を襲撃してきたのです。校内に残された多くの生徒たちを脱出させようとするピーターですが、そこに別のミステリオが現れ、事態は混迷を深めていきます……。
この前半のエピソードの肝となるのは、ピーターとフラッシュの友情でしょう。ピーターとは高校の同級生で、まじめな彼を「本の虫」とからかっていじめていたフラッシュですが、人々のために戦うスパイダーマンに憧れを抱いていました。まさか両者が同一人物だとは夢にも思わなかった彼の戸惑いは計り知れません。
生徒を守るために共闘する2人のやりとりは感慨深いものがあります。
後半のスパイダーマンが超人登録法反対派に転じてからの物語も『アメイジング・スパイダーマン』初期のキャラクターたちが再登場します。
教職を辞し、登録法賛成派から追われ、姿を変えて身を隠しながらも教え子たちを見守り続けるピーター。しかし一度正体を公表してしまった影響は、思いがけないところからも現れました。
ピーターの元恋人であるデボラ・ホイットマンが、交際当時のことを語った告白本を出版したのです。
その内容は、出版元であるデイリー・ビューグルの編集の手によって、ピーターが彼女の生活を台無しにした悪人であるかのようなものになっていました。
デボラの真意を確かめるべく、ピーターはデボラのサイン会の会場へ。しかしそれに目を付けていた者がもう一人いました。バルチャー(初登場:『アメイジング・スパイダーマン』#2)もまた、ピーターがそこに現れることを見越して狙いをつけていたのです。さらに、スパイダーマンを貶める告白本に怒ったフラッシュ、そしてデイリー・ビューグルの記者であり、ピーターの最初の恋人でもあったベティ・ブラント(初登場:『アメイジング・スパイダーマン』#4)もまた会場へ向かっていました。さながら初期キャラクターたちの同窓会といった趣きです。
それぞれの思いが交錯しながら、スパイダーマンとバルチャーの戦いが始まります。
スパイダーマンというタイトルだからこそできる物語
『シビル・ウォー』のクロスオーバー・シリーズは、以下の二つに分けられます。
・メインキャラクターを主役にした作品
・メインキャラクターの周囲を中心に描く作品
スパイダーマンのタイインでは、アイアンマンやキャプテン・アメリカといった両派のヒーローたちとの関係を描いた『アメイジング・スパイダーマン:シビル・ウォー』が前者。主にメイやMJの思いが描かれた『ピーター・パーカー、スパイダーマン:シビル・ウォー』と本作『フレンドリー・ネイバーフッド・スパイダーマン:シビル:ウォー』が後者にあたります。
『ピーター・パーカー~』と本作はいずれも、ピーターの周囲から見た彼の姿を描くことで、改めて登録法がもたらしたものを浮き彫りにしていく物語です。初期から周囲の人々との人間関係を丁寧に描くことによって、他のタイトルには無いタイプの深いドラマを育んできた『スパイダーマン』というタイトルならではのタイインと言えるかもしれません。
本作は、「正体を明かしたヒーロー」という、シビル・ウォーにおける核心的テーマを描くだけでなく、スパイダーマンというヒーローの歴史を語る上でも、外すことのできない一作です。
ぜひ、ピーターの高校時代や、フラッシュ、ベティ・ブラントの姿が描かれている『マーベルマスターワークス:アメイジング・スパイダーマン』も併せて読んで、スパイダーマンという作品の魅力を味わってみてください。
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