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不死身の男の死を描く衝撃作
『デス・オブ・ウルヴァリン』
デス・オブ・ウルヴァリン(2018.07.27発売)

[ライター] チャールズ・スール
[アーティスト] スティーブ・マクニーブン
[訳者] 御代しおり
[レーベル] MARVEL
本体2,400円+税/B5/128P
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ヒーリングファクターがなくなったウルヴァリン
映画『X-MEN』シリーズで11年間にわたってウルヴァリン=ローガン役を演じてきたヒュー・ジャックマン。彼がウルヴァリン役から卒業する作品として製作され、2017年に公開された映画『ローガン』は、不死身の男であるウルヴァリンの死が描かれたことで話題となりました。
しかし原作のマーベルコミックスにおいては、その3年前の2014年、初登場から40周年というタイミングで、不死だと思われていた男の「死」が描かれていました。それが今回紹介する『デス・オブ・ウルヴァリン』です。
ウルヴァリンは、本作以前の物語において、地球人類を支配しようとする知性を持つウィルスと戦い、その目論みを阻止します。しかしその代償として、自身の身体にそのウィルスが入り込んでしまった結果、彼のアイデンティティとも言えるミュータント能力「ヒーリングファクター(超回復能力)」を失ってしまったのでした。
これまで殺せなかった男が殺せる……その情報が裏社会に伝わり、多くの刺客がウルヴァリンのいるカナダの南西部ブリティッシュコロンビアの地へと押し寄せて来ます。その中には、莫大な懸賞金目当てのサイボーグ兵士、ニュークの姿もありました。ニュークを倒した彼は、事件を裏で糸を引くある人物がいることを知り、その人物を倒すべく行動に移ります。彼を狙う人物の正体とは…?
映画『ローガン』のもうひとつの原案?
本作にはウルヴァリンとの因縁が深いキャラクターが総登場します。黒幕の正体もファンであれば納得の人物なので、ぜひ本編を読んで確認してみてください。
アートを担当するのは、『オールドマン・ローガン』で老いたウルヴァリンの激闘をバイオレンスな描写と繊細な筆致で描いたスティーブ・マクニーブン。ウルヴァリンの最期に相応しい、ハードボイルドなタッチのアートは「孤高なるものの死」を劇的に演出します。
映画『ローガン』の原案は、既刊『ウルヴァリン:オールドマン・ローガン』ですが、この映画には本書『デス・オブ・ウルヴァリン』から影響も垣間見えます。自らの死に場所を求めているかのような人物像は、『オールドマン・ローガン』よりも『デス・オブ・ウルヴァリン』に近いようにも思えます。本書は、映画『ローガン』のもうひとつの原案として捉えることもできるかもしれません。
2000年以降、マーベルコミックスではキャプテン・アメリカやスパイダーマンといった有名キャラクターの死が描かれてきました。
キャプテン・アメリカの死は、「アメリカの象徴の死」が体現されていたと言えるでしょう。一方、スパイダーマンでは、瀕死のドクター・オクトパスとスパイダーマンの精神が転移したことからピーターが死亡、その死により彼のしてきたことの尊さが浮き彫りになりました。
では本作でのウルヴァリンの死は何を示しているのでしょうか。ウルヴァリンというキャラクターは、ヒーリングファクターの効果によって、あらゆる病気とケガが回復することと併せて歳をとるのも遅いため、多くの人との悲しい別れを経験しています。それがウルヴァリンのもつ「孤独」「孤高」というイメージにつながり、キャラクターの魅力になっていきました。
その積み上げた歴史の重みが彼の死をより印象的なものにします。本作で描かれる「孤高」とも言えるその死は、生と死を見つめ続けてきたウルヴァリンらしい最期にも見えます。その衝撃的な最期の姿をぜひ目撃してください。
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