2019.07.12
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アベンジャーズの解散!ファン必読の超重要作品が登場!

『アベンジャーズ:ディスアセンブルド』

アベンジャーズ:ディスアセンブルド(2019.4.12発売)

 [ライター] ブライアン・マイケル・ベンディス
 [アーティスト] デビッド・フィンチ 他
 [訳者] 御代しおり
 [レーベル] MARVEL
 本体2,700円+税/B5/176P
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名作誕生の起点となった1作!

それまで紡がれてきた大きな流れを思い切って終わらせることで、見たこともない新しいものが生まれることがあります。今回紹介する『アベンジャーズ:ディスアセンブルド』は、それまで連綿と続いてきた物語を、新しい時代の要請に応えて終了させるべく描かれた作品です。

『ハウス・オブ・M』『シビル・ウォー』『ワールド・ウォー・ハルク』『シークレット・インベージョン』『シージ』……2006年以降のマーベルユニバースを揺るがし、コミック史にその名を刻んだ大型クロスオーバーの展開の起点となったのは、2005年に刊行された「アベンジャーズ」タイトルのリニューアル、『ニューアベンジャーズ』シリーズでした。チームの絆をゆるがす大事件により解散したアベンジャーズに、スパイダーマン、ウルヴァリン、ルーク・ケイジといった新たなメンバーが加わってスタートしたシリーズは、全米同時多発テロ後の世相を反映させたヒーローコミックスとして、重厚かつメッセージ性の強い物語が描かれました。
そして前述した「チームの絆をゆるがす大事件」を描き、新たな時代への橋渡しとなった作品が『アベンジャーズ:ディスアセンブルド』です。
アベンジャーズは、当時すでに高い人気を誇っていたDCコミックスのヒーローチーム「ジャスティス・リーグ」に倣う形で1963年に誕生しました。2005年までの約40年間で通算503号まで刊行されますが、『アベンジャーズ:ディスアセンブルド』はそのシリーズの完結させるために始まった作品で、500号から物語は始まりました。

悲劇は物語の冒頭で訪れます。アベンジャーズのメンバーであるホークアイ、アントマン(スコット・ラング)、シーハルク、キャプテン・ブリテンの4人がアベンジャーズ・マンションで朝食をともにしていると、侵入者が現れたことを示す警報が響き渡ります。侵入したのは、非業の死を遂げた元アベンジャーのジャック・オブ・ハーツでした。アントマンの娘を誘拐した法で裁けぬ犯人と共に爆死した人物であり、アントマンの親友です。死んだと思っていた彼の姿を確認し、アントマンはすぐさま駆けつけますが、それは喜びの対面とはなりませんでした。会話を交わす直前にジャックの身体は爆発、アントマンはその巻き添えとなって死亡し、アベンジャーズ・マンションも爆発の影響で大破してしまいます。
さらにヴィジョンが操縦するクインジェットが敷地内に墜落、爆発の中から現れた彼は口から複数の球体を放出し、それはウルトロン軍団へと姿を変え、アベンジャーズに襲いかかります。さらに戦いの最中、暴走したシーハルクが仲間を傷つけてしまい…。
その後もアベンジャーズを襲う不可思議な現象は続きます。この現象の原因は何なのか…その過程で、アベンジャーズでもあるスカーレット・ウィッチに隠された秘密が明らかになり、それが「アベンジャーズ崩壊」の引き金となるのです。

ニューアベンジャーズ誕生へとつながる物語

本作で解散することになるアベンジャーズは、40年にわたり、メンバーの入れ替えなどで新陳代謝を繰り返しながら、マーベルユニバースの中心として影響力を持ち続けてきました。しかし大きな変化をさせることなく歴史を重ねるうちに、いつしか読者はアベンジャーズに「古い」イメージを持つようになっていきます。そうしたイメージのまま、刻々と変化する現代社会に対応する物語を描くのが難しくなっていたのかもしれません。
そしてアベンジャーズの価値を改めて見出すために取られた選択が「ディスアセンブルド=解散」でした。
アイアンマンとキャプテン・アメリカは、アベンジャーズのようなヒーローチームが今必要なのかを考えます。そして、ある事件をきっかけに集まったヒーローこそが、時代が求める新たなアベンジャーズに必要な人材だと考え、「ニューアベンジャーズ」が結成されます。

このような全く新たな展開をするときに問題になるのが「どんな状況になればアベンジャーズが解散するのか?」ということでしょう。この時にその状況として選ばれたのは、ビランの計略ではなく、内部からの崩壊でした。その衝撃的な展開は、新たな物語のインパクトをより大きなものにしました。
この大きな仕掛けの立役者は、ライターのブライアン・マイケル・ベンディス。ニューアベンジャーズの始動から、以後の大型クロスオーバーを展開していった人物です。彼の紡ぐ物語は、より実社会の出来事と関連したリアリティと刺激的な展開にあふれていたことは、『ニューアベンジャーズ』シリーズの邦訳を読まれたファンはすでにご存知のはずです。
そしてそこを起点に『アイアンマン:エクストリミス』や『キャプテン・アメリカ:ウインター・ソルジャー』(小学館集英社プロダクション刊)、『シビル・ウォー』、『プラネット・ハルク』などの名作が展開され、その後のマーベル・シネマティック・ユニバースに影響を与えていきました。こうした展開の広がりを見ると、『アベンジャーズ:ディスアッセンブルド』での変革の試みは大きな成功を収めたことは間違いありません。

「ニューアベンジャーズ」誕生の影に隠れてしまいがちな『アベンジャーズ:ディスアセンブルド』ですが、マーベルユニバースに変革をもたらし、その後の物語の起点ともなる重要な作品ですので、アメコミファンであれば、ぜひ読んでおいていただきたい1作です。

文・石井誠(ライター)