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「ニューアベンジャーズ」シリーズ、真の大団円!
『アベンジャーズ:プライム』
今回は、通販限定の「マーベル・マスト・リード」シリーズ『アベンジャーズ:プライム』を紹介します。本作は大型クロスオーバー『シージ』の後日譚にあたる物語となっています。
アベンジャーズ:プライム(2017.03.15発売)

[ライター] ブライアン・マイケル・ベンディス
[アーティスト] アラン・デイヴィス
[訳者] 御代しおり
[レーベル] MARVEL
本体2,800円+税/B5/P152
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『ニューアベンジャーズ:ブレイクアウト』から始まった「ニューアベンジャーズ」シリーズですが、アベンジャーズの名を冠しているものの、その幕開けはアベンジャーズ“ビッグ・スリー”の1人であるソーを欠いた状態でした。この頃のソーは、アスガルドの神々が永遠に生と死の輪廻を繰り返す「ラグナロク」を終わらせるための戦いに参加していたからです。
その後、キャプテン・アメリカとアイアンマンは、超人登録法をめぐって対立し、ヒーロー同士の内戦『シビル・ウォー』が勃発、2人の間に大きな溝を作ってしまいます。
そして、内戦終結直後にキャプテン・アメリカは暗殺され、続いてスクラル人による大規模な地球侵略『シークレット・インベージョン』が起こり、その終盤でソーがようやく復活を果たしました。しかしソーも、アイアンマンの内戦時における行動に大きな不信感を抱いていたため、この二人の間にも大きな溝が生まれてしまいました。その後、『キャプテン・アメリカ:リボーン』でスティーブ・ロジャースが復活を遂げたものの、その時アイアンマンは昏睡状態に陥っていました。
このように、「ニューアベンジャーズ」シリーズでは、最後の決戦に至るまでの間、ビッグ・スリーは常に誰かが欠けてしまっていました(『シークレット・インベージョン』に3人が並んでいる1コマがあるのですが、この時のキャプテン・アメリカは、その衣鉢を継いだバッキ―・バーンズでした)。
そんなビッグ・スリーがようやく、『シージ』で揃い踏みすることになるのです。
権力を掌握したノーマン・オズボーンの攻撃に対し、ヒーローたちがそれを迎え撃つ最終決戦で、ついにビッグ・スリーが肩を並べ戦うのです。「ニューアベンジャーズ」シリーズの締めくくりにふさわしい、最高の展開でした。
オズボーンを止めるために共闘した3人ですが、激しい戦いの合間に、互いへのこれまでのわだかまりを解消している余裕はありませんでした。つまり、ヒーローたちは勝利しましたが、全てが元に戻ったわけではありませんでした。
その後、邦訳版は『AVX:アベンジャーズ VS X-MEN』に舞台を移し、ここではビッグ・スリーの関係性は良好な状態になっています。そう、3人がどうやって絆を取り戻したのかが描かれないまま物語が進行していたのです。
前置きが長くなりましたが、その欠けたピースにはまるのが、本作『アベンジャーズ:プライム』なのです。
ビッグ・スリー、ファンタジー風世界での冒険!
本作は『シージ』での最終決戦の直後、オクラホマに浮かぶアスガルドが崩落していく場面からスタートします。
むなしくその光景を見つめるソーの横で、口論を始めるスティーブ・ロジャースとアイアンマン。3人の関係性は、雪解けにはほど遠い状況でした。
ところが、オズボーンの襲撃によって破壊された、九つの王国をつなぐ「虹の橋」の門の様子を確認しようとした3人は、突如開いた謎の空間へと吸い込まれてしまいます。
そこは九つの王国が混じりあったような異世界でした。その世界でバラバラになってしまった3人は、まずは互いを探そうとしますが……。
物語は、ソーの仇敵たちとの戦いを中心に、心が離れてしまったままの三人が、再び絆を取り戻すまでが描かれます。
クェイクが言うところの「ダンジョンズ&ドラゴンズ」風のファンタジー世界で、それぞれを待ち受ける運命も彼らのキャラクターに合っていて、ファンの心をくすぐります。エルフの女性からでもすぐに信頼を得るスティーブと、敵に捕まって素っ裸にされるトニーの対比は、これまでの2人の行いを思えば、思わず因果応報という言葉が頭に浮かんでしまいます。
絆の復活、そして新たな展開へ
マーベル・ユニバースではこの『シージ』から『AVX』の間に、「ヒロイック・エイジ」というヒーローたちの復権を描いたシリーズが展開されました。
本作『アベンジャーズ:プライム』は、「ヒロイック・エイジ」のプロローグ的な位置づけでもあり、ヒーローたちの復権の象徴が、このビッグ・スリーの完全復活であったと言えるでしょう。
「シビル・ウォー」から始まった、アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソーの対立は、感情的というより、思想・倫理観での対立が原因であったがゆえに根深く、そう簡単に修復できるものではありませんでした。
しかし長年、アベンジャーズとして共闘してきた3人には、そういった対立を乗り越えられるほどの「強い絆」があったのです。『アベンジャーズ:プライム』は、それを我々に思い起こさせてくれる、シリーズを読み続けてきたファンほど深い感動を味わえる1作だと言えるでしょう。
さらに日本語版特別収録として、巻末には『シージ』のもうひとつの後日譚である『セントリー:フォールン・サン』が掲載されています。
『シージ』のクライマックスにおいて、もう一つの人格であるボイドとなりヒーローと戦った一方、「ニューアベンジャーズ」シリーズでの最大の犠牲者であったセントリー。
邦訳版では、彼の死の決着もこれまで語られていませんでした。
『セントリー:フォールン・サン』は、セントリーの弔いに集まったヒーローたちを描く1話完結の作品です。セントリーの死を悼み、ヒーロー達が語るその思い出を読むと、「ニューアベンジャーズ」シリーズにおけるセントリーの物語にひとつの区切りをつけることができるのではないでしょうか。
『アベンジャーズ:プライム』と『セントリー:フォールン・サン』の2作は、『ニューアベンジャーズ:ブレイクアウト』から『シージ』にいたるシリーズを締めくくるのに欠かせないストーリーであることは間違いありません。
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