2017.03.31
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マイク・ミニョーラがアートを手がけた傑作!宇宙的危機の前にダークサイドがヒーローたちと手を結ぶ!?

『コズミック・オデッセイ』

コズミック・オデッセイ(2016.10.31発売)

[ライター] ジム・スターリン
[アーティスト] マイク・ミニョーラ
[訳者] 小池顕久
[レーベル] DC
本体3,200円+税/B5/P200
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ジャック・カービーが生んだ新しき神々

これまでDCユニバースでは、いくつもの宇宙規模の戦いをテーマとした作品が生みだされてきました。その中でも特に重要な意味を持ち、また多くのファンに愛されたシリーズが、70年代に描かれた『フォース・ワールド』です。

1970年、マーベル・コミックスの看板ヒーローたちの生みの親のひとりである超大物アーティスト、“ザ・キング”ことジャック・カービーが、なんとDCコミックスに移籍するという大きな出来事がありました。DCコミックスによって自由な環境を与えられたカービーは、彼が持つアイディアの集大成として『フォース・ワールド』シリーズをスタートさせます。

それはDCコミックスの別次元に創造された「フォース・ワールド」で、善神イザヤ・ハイファーザーが率いる惑星ニュージェネシスと、邪神ダークサイドが率いる惑星アポコリプスという、相容れることのできない善悪二陣営の新たなる神々「ニューゴッズ」たちが熾烈で壮大な戦いを繰り広げるというものでした。

後に多くのアーティストやキャラクター造形に影響を及ぼした『フォース・ワールド』シリーズですが、特にDCコミックス最大・最強のビラン、ダークサイドの誕生によって読者からの圧倒的な支持を集める人気シリーズへと成長しました。

しかし、その人気ゆえに編集側が物語に様々な干渉をし始め、わずか3年でジャック・カービーは『フォース・ワールド』から手を引くことに。物語は多くの謎を残したまま休眠状態となってしまいました。

その後、何度か『フォース・ワールド』シリーズの再生に向けた動きがありましたが、いずれも上手く行きませんでした。
しかし1988年、ついに『フォース・ワールド』に再び脚光が当たることになります。それが、本作『コズミック・オデッセイ』だったのです。

ダークサイドが共闘に踏み切った真意は果たして……?

かつて「フォース・ワールド」でニュージェネシスと戦っていた頃から、ダークサイドが欲していた「反生命方程式」。
そしてダークサイド同様に方程式を追い求めていたニューゴッズのひとりメトロンが、その方程式を解き明かしたことから物語は始まります。
メトロンによって別次元から解放され、この宇宙に出現した4体の反生命の分身たち。彼らが銀河系を滅ぼさんとしていることを察し、自分ひとりではそれを阻止することができないと理解したダークサイドは、ひとつの大きな決断を下します。それは永年の宿敵ニュージェネシス、そして地球のヒーローたちとの共闘でした。
ダークサイドの「計画」によって召集されたのは、スーパーマン、バットマン、グリーン・ランタン(ジョン・スチュアート)、スターファイヤー、マーシャン・マンハンター、そしてエトリガン・ザ・デーモンと分離し平穏に暮らしていたジェイソン・ブラッドの6人。彼らはニュージェネシスと組み、宇宙の危機を救うべく反生命の分身たちを追います。しかしその裏ではやはり、一筋縄ではいかないダークサイドが己の野望のため、異なる策謀を巡らせていたでした……。

サノスの生みの親ジム・スターリン+ヘルボーイの生みの親マイク・ミニョーラ!

本作は、『フォース・ワールド』の復活であると共に、同年スタートする新シリーズ『ニューゴッズ』のプロローグとしての側面もありました。

ニューゴッズの面々がヒーローたちとコンビを組む展開は、連載終了から時間が空いてしまった『フォース・ワールド』シリーズのキャラクターである彼らの認知度をあげるためでもあったのです。
この複雑な背景を持った宇宙規模の物語を構築したライターは、ジム・スターリン。以前はマーベル・コミックスに在籍し、コズミック系ヒーローであるキャプテン・マーベルやウォーロックなどの物語を担当していました。マーベル・ユニバース最強ビランの一翼を担うタイタン人、サノスを生み出したのも彼です。SF的世界観や宇宙を舞台とした冒険ものの経験を積んできたスターリンは、本作において文化が異なる4つの惑星を背景に、ヒーローとニューゴッズの苦闘を壮大なスケールで書きあげていきました。

そして作画を担当しているのは、この後『ヘルボーイ』シリーズでその名を知らしめることになるマイク・ミニョーラ。宇宙を消し去る力を持つ反生命対ニューゴッズ&ヒーロー連合軍の戦いは、彼のハイコントラストかつ繊細なアートによって、独特の迫力と雰囲気を持った叙事詩へと昇華されたと言えるでしょう。

当時はヒーローものに違和感を抱いていたというミニョーラですが、この『コズミック・オデッセイ』の筆致からは、後に『ヘルボーイ』シリーズで確立された魅力的な表現に繋がるいくつものピースを見い出せます。本作のコズミック・ホラー的な物語もまた、『ヘルボーイ』の世界観に少なからず影響を与えていることでしょう。
またカラーリングも当時主流であった色指定による彩色ではなく、水彩が使われているのが本作の特徴です。ミニョーラの筆致と共に、緻密で流麗な彩色が世界観に深い味わいを与えています。

ジム・スターリンとマイク・ミニョーラという実力派の大物がタッグを組むことによって生まれた至高の名作をぜひ体感してください!

文・石井誠(ライター)

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