2017.03.31
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スター・ウォーズコミック既刊レビュー!(1)

『スター・ウォーズ:スカイウォーカーの衝撃』『スター・ウォーズ:砕かれた帝国』『スター・ウォーズ:ダース・ベイダー』

スター・ウォーズ:スカイウォーカーの衝撃(2015.11.30発売)

[ライター] ジェイソン・アーロン
[アーティスト] ジョン・カサデイ
[訳者]  秋友克也
本体2,600円+税/B5/P152
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⇒書籍詳細ページ

◆マーベルとスター・ウォーズの歴史

本作は、アメリカにおいて2015年1月からスタートしたマーベルによるコミック版『スター・ウォーズ』の最新シリーズです。ちなみに、マーベルからの『スター・ウォーズ』作品の発売は実に28年ぶりです。

『スター・ウォーズ』のコミック版の歴史は長く、そのスタートは1977年の第1作目である『スター・ウォーズ エピソード4』の公開直後に遡ります。『エピソード6/ジェダイの帰還』公開後の1986年まで刊行は続き、実に9年もの間、作品が刊行され続けました。

しかし1991年以降、スター・ウォーズのコミックのライセンスは、『ヘルボーイ』シリーズなどを展開していたダークホースコミックスに移り、『スター・ウォーズ ダーク・エンパイア』をはじめとする数々のスピンオフコミックスが発売されることで、映画最新作がないこの時期に『スター・ウォーズ』の世界観を広げることに貢献してきました。しかし、24年にも及ぶダークホースコミックスとのライセンス契約も『スター・ウォーズ』の権利がディズニーに移譲されたタイミングで終了となりました。そして同じディズニー傘下であり、もともとスター・ウォーズのコミックを手がけていたマーベルがコミック化を受け持つことになったわけです。

こうして『フォースの覚醒』に先駆けてスタートしたコミック版スター・ウォーズですが、ファンとして気になるのはそのストーリーでしょう。本作は『スター・ウォーズ』の時系列に照らし合わせると、『エピソード4/新たなる希望』と『エピソード5/帝国の逆襲』の間を埋める物語が描かれています。そして、サブタイトル「スカイウォーカーの衝撃」にもある通り、主人公となるのは映画本編と同じくルーク・スカイウォーカー。ほかにもハン・ソロやレイアも登場します。マーベルの制作陣は、これまで映画では描かれなかった部分をしっかりと検証した上で、内容の齟齬がなく、さらに映画本編に繋がるストーリーを本作で構築しています。

◆「エピソード4.5」とも言えるストーリー!

『エピソード4/新たなる希望』でデス・スターを破壊し、一躍反乱軍の英雄となったルーク・スカイウォーカー。そのまま反乱軍に残った彼は、ハン・ソロの協力のもとレイアと共に帝国軍の兵器廠を破壊するための任務に臨みます。施設の侵入に成功し、動力源であるメインパワー・コアの破壊を目前にしたその時、兵器廠にダース・ベイダーが到着。ルークらは一転して危機に追い込まれます。乱戦の続く兵器廠の中で、ジェダイ騎士として生きると決めたルークは、師匠であるオビ=ワンの仇であるダース・ベイダーと初めて相まみえることになる……というのが、あらすじです。

本作の注目すべきところは、人気映画のコミック版などでよくある、本編とは関係のない独自展開や、オリジナルキャラクターによるサイドストーリーではなく、これまで語られていなかった部分を埋めていくような物語構成となっているところです。映画6部作と齟齬が出ないよう注意が徹底されているので、本作は「エピソード4.5」としても楽しむことができると思います。

ダース・ベイダーとの初の一騎打ちが描かれるルークだけでなく、ソロとレイアの関係性に深みを与えつつ、映画本編では描かれなかったベイダーとジャバ・ザ・ハットとのやりとり、オビ=ワンの跡を追うボバ・フェットとルークの衝突など、ファン心理をくすぐるナイスなシチュエーションが用意されています。

ライターは、これまで多くのマーベルタイトルを手がけてきたジェイソン・アーロン、アーティストは『アストニッシングX-MEN』などを手がけたジョン・カサディが担当。マーベル・コミックスのトップクリエイターが手がけたことで、『スター・ウォーズ』らしさが十二分に出た作品になっています。

「『フォースの覚醒』の公開に向けて、盛り上がりたいけど、余計な情報は入れたくない!」「でもこの高まるテンションをどうにかしたい」――そんなわがままなことを思うディープなスター・ウォーズファンにとって、本作はうってつけのタイトルです。エピソード4~6を観てから読むと、より面白くなること請け合いです。

ちなみに、本作の第1話のコミックブックは、全米で100万部を突破するほど大ヒットしています。これは、多くのファンを納得させるだけのクオリティがあったということでしょう!

スター・ウォーズ:砕かれた帝国(2016.01.30発売)

[ライター] グレッグ・ルッカ 他
[アーティスト] マルコ・ケケィト 他
[訳者] 石川裕人
本体2,300円+税/B5/P112
⇒Amazonで買う
⇒書籍詳細ページ

◆舞台は『エピソード6/ジェダイの帰還』の直後!

本作は、最新作である『フォースの覚醒』の公開に合わせて刊行された『ジャーニー・トゥ・フォースの覚醒』という小説・コミックスシリーズの1冊です。物語は、『エピソード6/ジェダイの帰還』の直後を舞台とし、映画7作品と設定を共有する「正史(カノン)」、つまり、正式にスター・ウォーズの物語の一部となっていて、これが最大の特徴と言えるでしょう。

まずは、本作の簡単なあらすじから紹介していきます。

物語は『エピソード6/ジェダイの帰還』終盤から始まります。

デス・スター内では、ルークがダース・ベイダーとの一騎打ちに臨み、森の惑星エンドアでは、同盟軍地上部隊によるデス・スターのシールド発生基地の制圧が行われ、デス・スターの周辺宙域では、同盟軍の宇宙戦闘機たちが帝国軍を相手に激しい戦闘が行っていました。

そして、その戦闘機を操るパイロットの中に、本作の主人公である女性パイロット、シャラ・ベイ中尉の姿がありました。

彼女たちの活躍もあり、同盟軍はデス・スターの破壊に成功。散っていった仲間を弔いつつも、同盟軍の兵士たちはエンドアで勝利の宴で盛り上がっていました。そして、シャラは、夫のケス・ダメロン軍曹と生きて再会します。そんな最中、エンドアの裏側に帝国軍の拠点が残っていることが判明し、シャラは自ら志願して奇襲攻撃に参加し、作戦を成功に導きます。彼女は、その後、レイア姫の護衛としてナブーに向かい、ルークと共に帝国軍への潜入作戦に参加します。

そう、本作では、映画では描かれなかった帝国軍との「その後」の戦いが描かれるのです。

◆映画シリーズとの深い関わり

シャラ・ベイ中尉と、ケス・ダメロン軍曹の間にはポー・ダメロンという息子がいることも書かれています。この作品時点のポーは、まだ2歳の子供で、シャラの父親のもとに預けられています。本作では詳細は描かれていませんが、ポーは両親の影響を受けたのか、その後レジスタンスのパイロットとなって『フォースの覚醒』で活躍することになります。

こうした新作『フォースの覚醒』に関係する設定だけでなく、本書には、過去の作品とのつながりを感じさせる描写もあります。

エンドアの戦いの20日後、レイア姫は、帝国軍崩壊後の新政府樹立に向けた協力を得るため向かった惑星ナブーでのシーンです。『エピソード1/ファントム・メナス』の舞台となり、レイアの母親であるパドメ・アミダラの出身地でもあるナブーにスポットが当たり、映画に登場したナブー・スターファイターも登場します。

つまり、本作は、ナブーを描くことでエピソード1~3を、エンドアの戦いを描くことでエピソード4~6を、そしてポー・ダメロンの存在を明かすことで、エピソード7を、1つのエピソードでつなげるという見せ方をしているのです。

本作では新たな謎も提示されます。それが解き明かされる作品の発表にも期待したいところです。

◆77年刊行のコミックス第一話を特別収録!

本書の巻末には、1977年にマーベルコミックスから発売されたスター・ウォーズコミックスの第1話も収録されています。『エピソード4/新たなる希望』の映画に基づいたコミカライズで、シリーズの第1話なので、ルークがタスケン・レイダーに襲われるシーンで終わってしまいます。しかしこの作品は、ファンにとってはなかなか興味深い資料になっています。

というのも、多くのコミカライズは映画公開に合わせて発売されるため、完成作品ではなく脚本を元に描かれています。つまり、細部が完成した映像とは異なってくるのです。たとえば、このコミカライズ版では、編集でカットされたルークとビッグズのやりとりが残されています。本作を読めば、そうした映画版との違いも楽しむことができるはずです。

ということで、『スター・ウォーズ:砕かれた帝国』は、シリーズの設定に踏み込んだ描写が含まれる上に、巻末に貴重な作品が収録されている、スター・ウォーズファン必読の1冊となっています。

スター・ウォーズ:ダース・ベイダー(2016.02.29発売)

[ライター] キーロン・ギレン 他 
[アーティスト] サルバドール・ラロッカ 他 
[訳者]  秋友克也
本体2,600円+税/B5/P152
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書籍詳細ページ

◆ダース・ベイダー降格!

2015年1月からマーベルコミックスでスタートしたスター・ウォーズのコミックスシリーズの第1弾となったのが、以前にも紹介した『スター・ウォーズ:スカイウォーカーの衝撃』です。そして、『スター・ウォーズ:ダース・ベイダー』はその第2弾にあたる作品になります。

本書で描かれる時期は『スカイウォーカーの衝撃』と同じく『エピソード4/新たなる希望』と『エピソード5/帝国の逆襲』の間にあたります。

つまり、『スカイウォーカーの衝撃』と同じ時系列を、ダース・ベイダーの視点で描いた物語となっていて、一部のエピソードは交錯します。語られなかったディテールを補完しあうというアメコミではおなじみの「クロスオーバー」形式で描かれているのです。

物語は、ダース・ベイダーがタトゥイーンのジャバ・ザ・ハットの宮殿に訪れ、取引をする場面から始まります。『エピソード4/新たなる希望』で描かれた「ヤヴィンの戦い」の結果、同盟軍によるデス・スターの破壊から唯一生き残ったダース・ベイダーは皇帝から叱責され、ジャバからの資源の買い付けの交渉を命じられました。タトゥイーンを訪れたベイダーはその使命に加え、個人的な用件がありました。それは、かつての自分の師であるオビワン・ケノービと共に行動し、その後デス・スターの破壊に貢献したXウイングのパイロットの正体を探ること。そのため、ベイダーはジャバに紹介してもらった賞金稼ぎのボバ・フェットに、パイロットの捜索を依頼します。

戦いの敗北により降格されたベイダーは、新たに将軍となったタッグの指揮下に入ります。ベイダーはタッグの力を認めていないため、不満を抱えたまま任務を続けることになります。そんな状況を打破すべく、ベイダーは自分の意のままに使うことができる私兵部隊を手に入れようとするのですが…。

◆皇帝とベイダーとの関係は?

アナキンの心情は、映画『エピソード1~3』では描かれていますが、『エピソード4/新たなる希望』以降では描かれることがほとんどないため、「ダース・ベイダーとなったアナキンは、皇帝のもとで何を思っていたのか?」は、あまりわからないままでした。

しかし、本作では、そんな謎に包まれ続けてきた彼の心情を垣間見ることができます。これこそが本書の最大の見所でしょう。

ダークサイドに墜ちたことで「解放」された印象もあるアナキンですが、本書を読むとダークサイドは自由で快適なものではなく、絶対的権力による強い束縛があることがわかります。

そして、降格によってプライドを傷つけられたベイダーが、思い出の地ジオノーシスで、かつて幸せだった頃の姿を思い返す場面は、家庭を顧みず、仕事だけに邁進したものの、ある時期からその生活を見つめ直すことになった中管理職の中年サラリーマンのようでもあります。

しかし、ダース・ベイダーはその抜け目のなさと強靭な意思の力で、そうした厳しい状況を打破しようとします。

映画では、息子であるルークを助けることによって、盤石のようであった皇帝とベイダーとの関係が初めて崩れたように見えましたが、本書を読むと、皇帝との信頼関係はそれ以前から決して盤石ではなく、ベイダーはずっと揺らぎ続けていたことがわかります。そうすると、両者が微妙な関係だったところに、息子が現れたことで、『エピソード6/ジェダイの帰還』での皇帝への裏切りにつながったのではないかと読み解くこともできます。

その他、C-3POそっくりながら、趣味が拷問というプロトコルドロイドのトリプルゼロと、大量の破壊兵器を搭載したアストロメク・ドロイドのBT-1の邪悪なドロイドコンビの登場や、ベイダーが唯一信頼する女性キャラクターであるアフラとの関係など、ルーク側とは趣の異なるストーリーを楽しめます。

文・石井誠(ライター)

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